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「なんで借りるの?」→「手続きが簡単」と回答! 金融庁が日本人ヤミ金利用の実態調査

「なんで借りるの?」→回答「手続きが簡単」だから 金融庁が日本人ヤミ金利用の実態調査の結果は!?の画像1
『闇金ウシジマくん Season3』より

「難波金融伝・ミナミの帝王」「闇金ウシジマくん」「闇金ドッグス」など“闇金”を題材にしたマンガやテレビドラマ、Vシネマは今でも根強い人気がある。マンガ「闇金ウシジマくん」(小学館)は2019年に完結したが、日本人の実態はまだまだ“完結”には至らぬようだ。

 金融庁はこのほど、貸金業利用者に関する調査結果を発表した。この中では“闇金”(貸金業無登録業者)の利用実態についても調査が行われており、貸金業者から希望通りの借入ができなかった場合、100人に1人が闇金を使っている。

 調査人数は4597人で、このうち3年以内に借入を行った経験者は2514人、3年より前に借入を行った経験者は201人、借入経験がないのは1882人だった。

 3年以内に貸金業者に借入の申し込みを行ったが、希望通りの借入ができなかった人243人のうち0.9%が「闇金からの借入れを行った」と回答している。さらに、3年以内に貸金業者からの借入を行った経験者2514人のうち「利用経験あり」が8.8%、「利用しようと思ったが利用経験なし」が8.7%だった。

 日本貸金業協会では、過度な借入れ防止のため年収の3分の1を超える貸付が原則禁止されているが現在、貸金業者に借入残高のある人の闇金利用経験は以下のようになっている。

 借入残高あり(1960人)うち闇金利用経験者8.1%
 借入残高が年収の3分の1を超える者(423人)のうち闇金利用経験者9.0%
 借入残高が年収の3分の1以下の者(1537人)のうち闇金利用経験者7.8%

 2006年に改正貸金業法が成立し、2010年に完全施行されてから消費者金融の利用者は減少の一途を辿っているものの、日本信用情報機構(JICC)によると2018年度の貸金業者登録数は1803万人、利用者数は1083万人となっている。これに闇金利用者8.1%をあてはめた場合には、登録者では約146万人が、利用者では約87万7000人が闇金利用経験者ということになる。

 また、闇金利用経験者226人の「利用した理由」と「借入を行った感想」は以下のようになっている。

<利用した理由>(複数回答)
 手続きが簡単であったため  28.8%
 家族に知られたくなかったため 23.5%
 借入限度額に達しており、貸金業者から断られたため 21.2%
 借入限度額に達していなかったが、貸金業者から断られたため 21.2%
 覚えていない・答えたくない 18.6%

<借入を行った感想>(複数回答)
 金利の負担は重くなかった 20.4%
 金利の負担が重かった 19.5%
 生活(事業)が悪化した 18.1%
 取立てが厳しかった 12.8%
 今後は絶対に借りない 11.5%
 取立ては厳しくなかった 4.4%
 覚えていない・答えたくない 25.7%

 これを見ると、利用した理由として「貸金業者から断られた」が半数以上を占めている。前述のように消費者金融では年収の3分の1を超える貸付が原則禁止となっている。つまり、断られた理由は「利用者が多重債務に近い状態にある」と思われる。

 意外だったのは、借入を行った感想として「金利の負担は重くなかった」が20.4%で最も回答が多かったことだ。闇金は貸金業無登録業者であるだけではなく、反社会的勢力に関連のある業者が多く、出資法の制限を超えた高金利で貸出を行う。

 30年ほど前に闇金からの借入を経験した50代の男性は、「金利は年利で200%を超えていたと思う。取り立ては厳しく、延滞すると自宅だけではなく、会社にも催促に来ていた」と証言している。

 むしろ、借入を行った感想の25.7%、借入元本額の質問に対する回答の55.3%、返済総額の質問に対する回答の55.3%が「覚えていない・答えたくない」としている点を考慮すると、違法な貸借取引が行われたと考えるのが妥当だろう。

 闇金の利用者を職業別で見ると、比率が最も高いのは学生、次いで会社員の順になっている。これは、新型コロナウイルスの感染拡大防止による休業要請などにより、収入面で大きな打撃を受けた人たちでもある。

冒頭にも記したように、 “闇金”を題材にしたエンタメは根強い人気があり、このところテーマにされることが多い。しかし、新型コロナにより生活が厳しいからといって、絶対に自らが登場人物になってはいけない。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2020/06/29 18:30
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