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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.589

青春の終わりをピンク映画スタイルで描いた81分 主演女優・川上奈々美が愛おしい『東京の恋人』

恋人だけに見せる、川上奈々美の無防備な笑顔

立夫役の森岡龍は、自主映画『ニュータウンの青春』(12)がPFFで評価されるなど監督としても活動している。

 この映画は何者かになろうとあがき、七転八倒しながら青春時代を過ごし、結局は何者にもなれなかった若者たちの物語だ。映画の世界で成功を収め、自分の撮りたい映画を撮り続けることで食べている映画監督は、世界を探してもほんのひと握りしかいない。映画の世界に限らず、何者にもなれずに悶々と日々を過ごすことになる人たちのほうが圧倒的に多い。

 そんなままならない人生を送る市井の人々を描くのに、低予算で制作されるピンク映画というジャンルはとてもよく合っている。ピンク映画の傑作『たまもの』(04)で知られるいまおかしんじ監督がスナックの客役でカメオ出演するなど、ピンク映画へのオマージュも感じさせる。立夫の義兄を演じる吉岡睦雄は、『たまもの』の主演男優だった。叶えられなかった夢や願望を、70~80分の短い時間の中で擬似体験させてくれるのがピンク映画ではないだろうか。

 エンドロールで「東京60WATTS」の歌う主題歌が流れる中、川上奈々美がとても無邪気な笑顔を見せる。恋人だけに見せるような、無防備な笑顔だ。“東京の恋人”川上奈々美が、とても愛おしく感じられる。映像の中の彼女はいつまでも年をとらず、ずっとこちらを見て笑い続けている。

 

『東京の恋人』
監督・脚本/下社敦郎 音楽/東京60WATTS
出演/森岡龍、川上奈々美、吉岡睦雄、階戸瑠李、木村知貴、西山真来、睡蓮みどり、窪瀬環、辻凪子、秋田ようこ、松本美樹、矢野昌幸、いまおかしんじ、佐藤宏、マメ山田、榎本智至、伊藤清美
配給/SPOTTED PRODUCTIONS 6月27日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
c)2019 SALU-PARADISE/MOOSIC LAB
https://tokyo-modernlovers.com

最終更新:2021/05/25 19:04
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