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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.588

レイシズムが蔓延する社会事情とその解決策は? 短編版がネットで無料配信中『SKIN/スキン』

タトゥー除去手術に伴う費用と痛み

シングルマザーのジュリー(ダニエル・マクドナルド)と出会い、ブライオンはレイシズム団体から足を洗うことを決意する。

 では、どうすればレイシズムやヘイトスピーチはなくなるのか? 長編映画『SKIN/スキン』のキーパーソンとなるのは、ブライオンにとっては長年の宿敵である黒人の活動家ダリル・L・ジェンキンス(マイク・コルター)だ。反ヘイト団体を運営するダリルのことをそれまでさんざんディスり続けてきたブライオンだが、誰にも頼ることができず、藁にもすがる思いでダリルに救いを求める。ブライオンが本気なことを知り、ダリルは反ヘイト団体のネットワークを活かしたサポート体制を整える。

 ブライオンひとりをレイシズム団体から抜けさせただけで、米国の人種差別問題が解消できるわけではない。でも、更生の道筋をつくることに大きな意味がある。憎しみの塊だったブライオンを、寛容さで受け入れるダリルだった。

 ブライオンの事情を知り、彼の全身に施されたタトゥーの除去手術に掛かる費用を全額提供することを申し出る篤志家も現れる。ブライオンを苦しめ続けてきた怒りの連鎖が、寛容の輪へと変わっていく。当然ながら、タトゥーの除去はかなりの痛みを伴う。ブライオンは合計25回、16カ月間にわたって除去手術を重ね、生まれたままの姿に戻る。除去手術に伴う痛みに耐えることは、ブライオンにとっての贖罪行為でもあったに違いない。

 経済不況が長引けば長引くほど、レイシズムは強まり、ナショナリズムを求める声が大きくなっていく。そんな中、タトゥーの消えたブライオンは新しい転居先で、新しい人生を歩むことになる。レイシストたちには怒りや憎しみではなく、社会的包摂と寛容さを、そして永続的な経済政策を。アウシュビッツサバイバーの孫であるガイ・ナティーヴ監督は、とても分かりやすく差別問題の解決策を実例に沿った形で提示してみせている。

『SKIN/スキン』http://skin-2020.com

製作・監督・脚本/ガイ・ナティーヴ

出演/ジェイミー・ベル、ダニエル・マクドナルド、ダニエル・ヘンシュオール、ビル・キャンプ、ルイーザ・クラウゼ、カイリー・ロジャーズ、コルビ・ガネット、マイク・コルター、ヴェラ・ファーミガ

配給/コピアポア・フィルム R15+ 6月26日(金)より新宿シネマカリテ、渋谷ホワイト シネクイント、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

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最終更新:2020/06/24 17:42
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