レイシズムが蔓延する社会事情とその解決策は? 短編版がネットで無料配信中『SKIN/スキン』
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レイシズムを生み出す社会構造
長編映画『SKIN/スキン』の主人公・ブライオン( ジェイミー・ベル)は、子どもの頃に両親に捨てられ、 白人至上主義団体を主宰するクレーガー(ビル・キャンプ) とシャリーン(ヴェラ・ファーミガ)に育てられた。 ブライオンにとっては、白人至上主義団体こそが家族であり、 唯一の居場所だった。
家族の結束をより固めるため、ブライオンは極右活動の急先鋒をいつも買って出る。顔面を埋め尽くすように彫られたタトゥーは、ブライオンが生きている証だった。反ヘイト団体と激しく衝突し、街で静かに暮らすイスラム教信者たちを排斥することに、生きがいを感じていた。
暴力に明け暮れる日々を過ごしていたブライオンだが、そんな彼が恋に陥る。相手は3人の娘を持つシングルマザーのジュリー(ダニエル・マクドナルド)。娘たちにありったけの愛情を注ぐ、ポッチャリ体型の白人女性だ。彼女と結婚し、白人至上主義団体から足を洗うことを決意するブライオンだが、親代わりのクレーガーやシャリーンたちは認めようとしない。これまで団体が重ねてきた悪行の数々を、FBIにバラされることをクレーガーたちは恐れていた。
まっとうに生きようとするブライオンの道は多難を極める。かつての仲間たちの嫌がらせに加え、「ハローワーク」で職を探そうにも、レイシストとして悪名を馳せていたブライオンはブラックリストに入っており、まともな仕事に就くことができない。自分の過ちを悔い、更生しようとしても、社会は受け入れようとしない。それがレイシストたちの置かれている現実だった。
ホワイトトラッシュと称される白人の低所得者層は、子どもを学校に通わせることもままならず、定職に就くこともできず、その結果としてアルコール依存やドラッグ依存に陥ってしまう。ブライオンのように更生を願っても、行政は手を差し伸ばしてはくれない。白人の仕事を奪ったのは黒人や移民たちだと、激しくヘイトするようになる。プアホワイトにとって、レイシズムが心の拠り所となっている。
人種差別の行き着く先を描き、日本でもスマッシュヒットを記録した実録映画に『ホテル・ルワンダ』(04)がある。アフリカのルワンダ共和国は、植民地時代に宗主国ベルギーが統治しやすいようにフツ族とツチ族とを意図的に差別する政策を敷き、植民地支配が終わっても差別意識は残った。そして、1994年にフツ族過激派による「ルワンダ大虐殺」が起きた。100万人近いツチ族が殺害された、現代のジェノサイドだった。植民地時代の支配層が考案した「負の歴史」が招いた惨劇だった。
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