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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 鉄道で迫ったシベリア抑留の真実

満洲の邦人を置き去りにした日本軍と安倍政権は酷似! “鉄道”から迫った「シベリア抑留」の真実

写真/Getty Images

 『桶川ストーカー殺人事件』『殺人犯はそこにいる』(新潮文庫)、『「南京事件」を調査せよ』(文春文庫)などで高い評価を得てきたノンフィクション作家・清水潔氏が先頃、最新作『鉄路の果てに』(マガジンハウス)を出版した。同書の始まりは、亡き父のメモから見つかった「だまされた」の文字だったという。その想いは一体なにゆえ発せられたものなのか――。戦時中、鉄道連隊に所属していた父の抑留経験を追って、シベリア鉄道へと足を運んだ清水氏に話を訊いた。

清水潔著『鉄路の果てに』(マガジンハウス)

なぜ、戦争の本なのに“鉄道”なのか?

――「伝聞」が嫌いで「事実」を自分の目と頭と足で探ることを徹底されてきた清水さんが、シベリア抑留にどう迫るのだろうと思いながら読ませていただきました。『「南京事件」を調査せよ』のときは南京入城した兵士たちがリアルタイムで残していた日記が大きな証拠になりましたが、シベリア抑留者は日記すら残せませんでした。ただ、連れて行かれたときに使われた線路は今も残っている。そして、国ごとの鉄道の軌間の違いなどから日本と中国、日本とロシア/ソ連の関係が見えてくる。この「線路こそが動かせないファクトだ」という視点が非常に面白かったのですが、これは実際に現地に赴いてみて気づいたことなのでしょうか?

清水 そうです。この本の取材は、もともとは親父のことを書いておきたいという想いから始まりました。戦中には朝鮮半島を北上するにも、中国大陸を横切るにも、すべて鉄道を使っていましたから、親父が経験した鉄路を辿れるだけ辿ってみよう、と。ただ、本にするにあたってはプライベートなことばかり書くつもりはなかったですし、ただの「シベリアへの旅の本」にしたかったわけでもありません。

 私が旅で見たこと、考えたことを通じて、戦前に日本人は中国で何をしていたのか、敗戦後に抑留されたシベリアとはどんな場所なのか……私の親父のケースをガイドにしながら、日本人が19世紀後半から20世紀半ばにかけて大陸とどう関わっていたのかを、読者の方に知ってもらえるものにしたかった。満州やシベリア抑留について、よく知らなかった方にこそ読んでいただきたいという気持ちを強く持っています。

――コロナ禍で突然ECの需要が増えて物流が一部滞ったりと、物流の重要性を実感した方が多いと思うのですが、『鉄路の果て』を読むと、当時は鉄道輸送が戦争のロジスティクス上、決定的に重要だったと改めてわかります。そこも「なぜ、戦争の話をするときに鉄道に焦点を当てるのか?」の答えになっていて、膝を打ったところでした。

清水 現代の人は、まずそこがわからないんですね。「なぜ、鉄道なのか?」と。当時は今のように道路網が完備しておらず、鉄道を使わずに軍隊が移動しようとするなら、泥沼のような悪路を馬車やトラックが足を取られながら進むしかなかった。そういう交通事情から考えないと、日清戦争、日露戦争は見えてこない。だから、まず鉄道が重要だと。

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