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満洲の邦人を置き去りにした日本軍と安倍政権は酷似! “鉄道”から迫った「シベリア抑留」の真実

バイカル湖の氷上に線路を引いて、列車が沈んだ

――『「南京事件」を調査せよ』に続いて、「調査報道の手法は70年以上前の歴史的な出来事に対しても通用するか?」という方法論的な挑戦なのではと感じましたが、どのくらい対象に迫れたという印象ですか?

清水 「現地に取材に行って全部わかった」というのは理想ですけど、近代史については特にそれは無理ですよね。当然、今行っても当時のシベリアとは違います。温暖化も進み、街もきれいになっている。イルクーツクに行っても、文献が見られるわけでもない。だから、「旅をしたからわかった」というより「わかっていないことがわかった」――それらが、新たに調べてみるきっかけになりました。

 例えば、私も第一次世界大戦末期から日本兵がシベリアに出兵していたことは多少知っていたものの、「どこまで進軍していたんだっけ?」となるとよくわからずに足を運んでいました。帰国後に信頼できる文献を何冊か読んでいくと、自分が現場で見たものとつながっていく。あるいは、現地で「バイカル湖の氷の上に線路を引いて列車を走らせようとしたが、失敗して湖に沈んだ」という話を聞いて「そんなバカな」と思いながらも、明治時代の新聞を調べていくと、なんと本当だったとわかる。ロシア取材で知り合った人に帰国後に連絡するなど、戻ってきてからの補充取材も多かったですね。

 間違いなく、現場に行かなければ、何を調べるべきなのか見当すらつかなかったことがたくさんあります。

――今までの事件に対する取材・調査と比べて、歴史を扱う場合に圧倒的に違う点は?

清水 当事者に会えないことですね。もちろん、現代の事件を追っていても、容疑者にも被害者にも会えないことが大半です。それでも関係者に取材したり、現場を見たりすることはできる。ところが、歴史に関してはほぼ当事者がいない。取材に赴いても、体感できるのは現地の雰囲気くらいです。

 それでも今言ったように、自分が感じたこと、目にした経験の有無は、近代史の史料を読み込む上で決定的に役に立ちます。例えば、南京事件について否定派は「30万人を1日で殺せるわけない」と言います。だけど、一口に南京といっても、とてつもなく広いんですよ。南京市の中心部だけでも、現代の日本人が抱いている「都市ってこのくらいだろう」という感覚からすると、ものすごく広い。それを体感していると、「ここに2カ月かけて日本兵がやってきたのか。なるほど、30万人はわからないけれども、数万人、十数万人の殺害は物理的にありうるな」というイメージが沸きます。もちろん、それだけでは虐殺があったとは断定できませんが、現場に行かずに「なかった」と言う人とはまったく違う感覚が得られます。

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