IKEA原宿店オープンで大激変! 若者の街から“ショールーム”へ進化を遂げた原宿、ここに来ればマーケティングの未来が見える!?
#原宿 #IKEA #WITH HARAJUKU
東京・原宿の街が大激変している。
6月5日、JR原宿駅前に、新スポット「WITH HARAJUKU」(ウィズ原宿)がオープンした。当初は4月下旬に開業する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期に。ようやく開業を迎えたことで、原宿駅前は今、これまで以上に多くの人で賑わっているのだ。
原宿といえば、3月下旬にJR原宿駅の新駅舎もお披露目になったばかり。原宿エリアは再開発が進んでおり、「WITH HARAJUKU」に出店するIKEAやUNIQLOを中心に、話題の店舗が続々とオープンしている。
今、かつてなく消費者の心を掴んでいる原宿。それに伴い、街の磁場にも大きな変化が起こっているようだ。ここに来れば、日本市場のマーケティングの未来が分かるかも知れない——さっそく、新しく生まれ変わった原宿をレポートしてみた!
「@cosme TOKYO」はデパコスもプチプラコスメもお気に召すまま
JR原宿駅の表参道口を降りてすぐのGAP跡地に構えるのが、2020年1月にオープンしたコスメセレクトショップの「@cosme TOKYO(アットコスメトーキョー)」。コスメの総合情報サイト「@cosme」の大型路面店で、約400坪を誇る2階建てのフロアには、多種多様なブランドのコスメが所狭しと陳列されている。店内は、コスメや美容に感度の高い客で賑わっていた。
特徴的なのは、高価なデパコスや、専門店でしか買えないスキンケア用品、ドラッグストアやドン・キホーテでも買えるプチプラコスメが混在していることだろう。まさに“コスメの博覧会”といったところだ。
各ブランドのテスターも充実しており、気になるコスメを気軽に試すことができる(※新型コロナウイルス感染予防のため、テスター利用時には手指の消毒やアメニティの利用が必須)。店内にスタンバイしているBA(ビューティーアドバイザー)さんに話を聞いてみたところ、「リップはshu uemuraやM·A·C、目元はCANMAKEというメイクもお試しいただけますよ!」と教えてくれた(※BAさんが客の肌に直接触れるサービスは休止中)。オールデパコスメイクも良し、一点豪華主義メイクも良し。お気に召すままである。
店内には、ウェブサイト「@cosme」で「ベストコスメアワード」に輝いた、口コミ人気の高いコスメをショーケース風に陳列しているコーナーもあった。コスメは発色やテクスチャ、肌に合う合わないが重要なため、ネット通販で買うことに抵抗があるという人も少なくないはず。ここでなら、気になっていたアイテムを実際に自分の肌で試して検討、購入することもできる。
ちなみに、すぐ隣にはマツモトキヨシの店舗がひっそりと佇んでいる。女子高生の間で、「@cosme TOKYO」で物色したコスメをマツキヨで安く購入する、という“裏技”がそのうちブームになったりしなかったりするかも知れない。
「IKEA」の庶民派アーバンライフと、「UNIQLO」のロボットレストラン感
「@cosme TOKYO(アットコスメトーキョー)」のすぐ隣が、話題の新スポット「WITH HARAJUKU」(ウィズ原宿)だ。駅徒歩30秒と立地バツグンな話題の最新スポットということもあり、店舗前は多くの人で賑わっていた。
ちなみに「WITH HARAJUKU」を予習するため公式サイトを覗いてみたところ、そこには「未来を紡ぐ”たまり場”」「文化と創造力を世界に発信する、TOKYOの新たなプレゼンテーションステージ」「そんな原宿独自のカルチャーを育んできたのが、この地に集う人々のクリエイティブマインドとインディー精神です」などと魅力的な横文字が並んでいたのだが、サッパリ意味がわからなかった。とはいえ百聞は一見にしかず。さっそく体感してみよう。
「WITH HARAJUKU」は地下3階、地上10階建て。IKEAやUNIQLO、スターバックスコーヒーをはじめ、スノーピークやオッシュマンズ、資生堂パーラーなど、人気ショップやカフェ・レストラン全14店舗が揃っている(※順次開業予定)。最大300人収容のイベントホールも併設されており、上の階は高級賃貸マンション(参考:6階1K+DEN/40.33㎡/賃料280,000円)という造りになっている。
「WITH HARAJUKU」の目玉店舗のひとつが、IKEAの日本初の都心型店舗「IKEA原宿」だ。これまでは、休日にわざわざ下り電車に乗って郊外まで繰り出さなければならなかったIKEAだが、ここなら学校や仕事帰りでもフラリと立ち寄れる。
「IKEA原宿」は1~2階の2フロアで、「眠る」「整える」「くつろぐ」「料理する」と生活のシーン別に商品が分けられている。売り場面積は決して広くはないものの、およそ1000種類以上の商品が取り揃えられているという。
雑貨やリネン、食品などの小物商品は当日持ち帰りが可能だが、ベッドやソファーなどの大型家具は展示のみ。後日配送で購入するというシステムだ。
IKEAといえば、バッチリとインテリアコーディネートされたショールームを眺めて「こんな素敵な部屋に住めたらな……」と妄想するだけで楽しい、という人も多いだろう。原宿店は土地柄か、都心の単身者が暮らすような狭いワンルームをイメージしているという印象だった。庶民派アーバンライフを提案してくれるのは、さすがIKEAと言ったところだ。
ちなみに、2階のフロアには、スウェーデン伝統のフラットブレッド「ツンブロード」(※原宿店限定)を提供するフードコートも併設されている。しばらくの間はかなりの混雑が予想されるものの、落ち着けばカフェやランチ利用にも向きそうだ。
続いて、「WITH HARAJUKU」の地下1階と1階の2フロアに構える「UNIQLO原宿店」に行ってみた。「リアルとバーチャルの融合を体現した最新の店舗」がテーマということで、店内はまるで新宿・歌舞伎町の「ロボットレストラン」のようにキラキラして、近未来的な雰囲気が漂っていた。
やはり、そんじょそこらのUNIQLO店舗とは一線を画しており、地下1階の売り場には240台のディスプレイを設置。専用のコーディネート検索アプリでユーザーから投稿された着こなしを検索、閲覧して商品を購入することができるという。
ちなみに、2012年に表参道の店舗が閉店して以来、UNIQLOは約8年ぶりの原宿エリアへの出店となる。大進化を遂げ、満を持しての“出戻り”に期待は大きい。
「GU スタイル スタジオ」はまさかの“試着専門店”
「WITH HARAJUKU」を後にして、原宿駅前から表参道方面へ向かうと、徒歩60秒もしないうちに左手に見えてくるのが、ファストファッションブランド「GU」が展開する「GU スタイル スタジオ」だ。
駅前の再開発に先駆け、2018年11月にオープンした「GU スタイル スタジオ」は、オンラインとオフラインをつなぐ“次世代型店舗”を謳っている。店内は新作展示会のような雰囲気で、各アイテムのサイズやカラーが揃っていて、生地や丈感を確かめることができる。もちろん試着も可能だが、なんと商品を買って帰ることはできない(※一部商品を除く)。
というのも、「GU スタイル スタジオ」は、展示されている服のタグについているQRコードをスマホに読み込ませ、オンラインストアで購入。商品は後日郵送されるという仕組みなのだ。
とはいえ、“試着専門店”という概念はまだまだ浸透していない様子。入り口で、オシャレな店員さんが「当店はご試着のみです」という旨をいちいち説明していたのだが、それを聞いたカップルと、女子高生の2人組が「な~んだ!」という顔をして踵を返したのを目撃した。
少子化時代の原宿が“ショールーム”化する理由
このように、激変する原宿の街並みについて、流通アナリストの渡辺広明氏は、「原宿は、これまでのような“若者の街”から、全年齢をターゲットにした“ショールームの街”へと変化しています」と分析する。
「少子化によって若年層の数が減っている中で、そのマーケットも今後、ますます縮小していきます。マス・マーケティング的にいえば、若者層をいくら取り込んだところで限界があるわけですが、これは“若者の街”と呼ばれる原宿にとっても、決して他人ごとではないでしょう。
そんな中、JR原宿駅前という最高の立地に『WITH HARAJUKU』がオープンし、ここを起点にアパレルにコスメ、インテリアなどの人気店が原宿にラインナップされました。消費者にとってはこれほど便利なこともありませんが、とくに『WITH HARAJUKU』は、若者向けの店が揃う竹下通りと、大人向けのハイソな表参道方面の、ちょうど中間地点に位置しています。すぐ近くにはメトロの明治神宮前駅もありますし、これで人の流れがガラリと変わることはもちろん、原宿の年齢層が広がることが予想されます」(渡辺氏)
では、“ショールームの街”とはどういうことだろうか。
「例えばアパレルなら、消費者の多様化するニーズに合わせて、季節ごとに豊富な商品を展開しています。とはいえ、各地の店舗に全商品を取り揃えることは不可能ですし、商品の特性上、ウェブショップだけではカバーしきれないところもあります。
そこでは、都心の一等地に旗艦店を設け、ある程度ターゲットを絞った商品を“展示”することで、お客さんに現物を確かめてもらい、実際の購入はウェブを活用してもらうという新たなビジネスモデルが生まれているのです。原宿駅前のアットコスメやIKEA、GUなどの小売店舗はまさにこの“ショールーム”としての役割を担っており、原宿の街全体がショールーミング化していると言えるでしょう。アットコスメのように店舗内にスタッフを多く配置していたり、UNIQLOやGUのようにアプリを駆使して利便性を高めていたりすることも、ショールーミングの特徴です。これまでは家電量販店が力を入れていた印象でしたが、原宿の成功をきっかけに、都心の他エリアでも見られるようになってくるかも知れません」(渡辺氏)
変わりゆく原宿の街で、ウインドウショッピングならぬ“ショールーム”ショッピングを体験してみてはどうだろうか。
渡辺 広明(わたなべ・ひろあき)
浜松市出身。2児の父。マーケティングアナリスト、日本唯一の流通アナリスト、コンビニ評論家、流通ジャーナリスト、約730品の商品開発に携わるマーケター、元コンビニバイヤー、元コンビニ店長、現コンビニアルバイター、「浜松市やらまいか大使」(観光大使)など、さまざまな顔を持つ。フジテレビ『Live Newsα』レギュラーコメンテーター『ホンマでっか⁉TV』レギュラー評論家として活躍する他、スポーツ紙「東京スポーツ」に連載を持ち、ニュース・ワイドショー・新聞・週刊誌・ラジオなどのコメント・講演会・アドバイザリー・顧問業などでも幅広く活動中。趣味は「ドラゴンズ熱烈応援」「時折フルマラソン」「発展途上国の教育支援(ガーナ・ラオス)」。著書に『コンビニが日本から消えたなら』(KKベストセラーズ)
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