コロナチャレンジ、ピラミッド登頂、詐欺行為……訴訟も炎上もすべて収益化させる世界のお騒がせYouTuber
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意外と炎上は少ない中国……ライブコマースが人気?
意外と炎上は少ない中国……ライブコマースが人気?
さて、ここまで紹介してきた過激派YouTuberは主に米国の人間だが、ほかの地域にも目を向けてみると、本当の意味での過激派の情報がぞろぞろ出てきた。
モロッコでは動画内で王族を侮辱したとして4年の懲役を喰らった者もいれば、ブラジルでは“美人すぎるeスポーツ選手”が、詐欺行為で懲役116年もの大型判決を出されている。さらにメキシコでは、17歳の有名YouTuberが麻薬組織の大物ボスを動画内で罵倒すると、組織の若い衆に襲われ蜂の巣にされていた。どうやら、国によっては炎上は命に関わるようだが、それでは、“YouTubeが見られない国”ではどうだろうか?
「中国のインターネットは政府によって完全に管理されているため、YouTubeをはじめ海外に拠点を置く動画プラットフォームは基本的に遮断されています。代わりに、それらに相当する国産のプラットフォームが提供されています」
そう語るのは『中国のインターネット史』(星海社)などの著作を持つ山谷剛史氏。同氏は続ける。
「近年、中国の動画市場はTikTokのようなショートムービーが主流ですが、去年からライブコマース、いわゆる通販動画が“チャイニーズドリーム”として流行しています。『淘宝』や『天猫Tmall』が主なプラットフォームです」(同)
諸外国とは事情が違う中国の動画プラットフォームだが、そんな中で炎上で名を馳せている者はいるのだろうか?
「中国で炎上しやすいのはエロ系。女性が気を引くために際どい格好をすると叩かれるんです。ただ、ライブコマースでエロ系に走るといった事例は、自分が知る限りありませんね。あるとすればTikTokですが、そもそも炎上商法というものも聞いたことはありません」(同)
では、単発で話題になった炎上事件にはどのようなものがあるのだろうか?
「炎上とは少し違うかもしれませんが、ライブコマースで日本製品の偽物が流行するといった事件はありましたね。歌手で女優の蔡文静【11】が、ミレービスケットというお菓子を紹介したところ、大変な人気になりまして、さらにそれを見た人たちが今度は勝手にパッケージデザインを真似して偽物を売り始めたんです。もっと深刻な事例としては、办公室小野(オフィスの小野さん)【12】という女性の網紅(ワンホン・中国版インフルエンサー)ががきっかけになった“ポップコーン事件”が挙げられます。この網紅はアイロンやパソコンケースで肉を焼くなど、オフィス用品を使ったアイデア料理で有名になった人なのですが、空き缶を使ってポップコーンを作るという動画を小学生が真似し、全身に大火傷を負って死亡する事故がありました」(同)
ちなみにこの網紅はYouTubeでも活動している。遮断されているはずのYouTubeで活動できているのは謎だが、VPNなどのツールを使えば案外簡単に視聴できるという。また、大量の爆竹を鳴らして祝われる中国の旧正月シーズンには、マンホール内に爆竹を投げ込んで大爆発させるという“マンホールチャレンジ”が流行し、子どもを中心に大量のケガ人を出したという報道もある。
過激派配信者は減らない! YouTubeの姿勢も問題
このように、過激な動画配信者は世界中にいることがわかったが、YouTubeをはじめとする巨大動画プラットフォームは今後、彼らのような存在にどのような対応をとっていくのだろうか? 前出の高橋氏はこう予測する。
「いま過激とされている動画も、アップロードされた当初はまだ“過激”とみなされていなかったものが多く、グーグルも批判を受けるたびにガイドラインを後出しで改定していくので、見方によっては気の毒と言えなくもありません。もちろん、常識的にあり得ないような動画もありますが、19年だけでYouTubeのガイドラインは30回近く変わったといわれているんです。具体的なペナルティとしてはアカウントの削除をはじめ、広告の停止といった金銭的な面での措置があり、効果を上げているようですね。過激な動画でプラットフォームの知名度を上げてきたのに、叩かれるたびにコロコロ姿勢を変えるなんてポリシーもへったくれもないと思いますけど(笑)。ただ、YouTubeはプラットフォームとしては盤石なので、YouTubeである程度ファンを獲得してから他の媒体にいつでもいけるような体制を整えることが、配信者たちの今後の課題だと思います」
結局のところ、配信者もプラットフォームも世間体やトレンドに左右されるということである。いずれテレビ業界と同様にコンプライアンスでがんじがらめにされるかもしれない。しかし、テレビと違い、ネットには次々と新たなプラットフォームが生まれている。過激な動画に需要がある限り、過激な配信者とその受け皿が減ることもないだろう。
(文/ゼロ次郎)
※「サイゾー」2020年4・5月合併号【特集:YouTube”新”論/実録・狂気の関西ラップ】より
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