敗戦後の国家を再建したのは戦犯たちだった!? 不問にされた戦争犯罪を暴く『コリーニ事件』
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ドイツ映画『コリーニ事件』は、かなり異色の法廷サスペンスだ。現役弁護士であるフェルディナント・フォン・シーラッハの長編小説デビュー作を映画化したもので、ドイツ法曹界、そして戦後ドイツの闇に斬り込んだ問題作となっている。多重構造の闇に包まれているので、この作品の特異性が分かるよう、最初の闇ベールを一枚はいだ形で紹介したい。
主人公はトルコ系の新米弁護士カスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)。ドイツ経済界の大物ジャン・B・マイヤー(マンフレート・ザパトカ)がベルリンの一流ホテルで銃殺される事件が起き、容疑者の国選弁護士を引き受けることになる。実は被害者のジャン・B・マイヤーは、普段はハンス・マイヤーと名乗っており、小さい頃からライネンが世話になった恩人。父親が家を出ていったライネンにとって、父親代わりの存在だった。恩人殺しの容疑者を弁護することに、ライネンは躊躇する。
容疑者のコリーニ(フランコ・ネロ)はイタリア出身で、ドイツの自動車工場に長年マジメに勤めていたという。コリーニはハンス・マイヤー殺しを認めており、有罪であることはほぼ確定している。だが、大企業の老オーナーとイタリア生まれの労働者との接点が見つからない。ライネンが接見しても、寡黙なコリーニは殺人の動機について口を開こうとはしなかった。
ライネンにとって圧倒的に不利な裁判の流れが変わったのは、凶器となったのが「ワルサーP38」だと判明してから。「ワルサーP38」は第二次世界大戦時のドイツ軍が使用していた銃であり、現在では入手困難。子どもの頃に「ワルサーP38」を見た覚えのあるライネンは、裁判の一時中断を求める。コリーニの故郷であるイタリアへと飛んだライネンは、そこで衝撃的な事実を知ることになる。
大企業を経営し、トルコ系移民の二世であるライネンを優しく励ましてくれていた好々爺ハンス・マイヤーには、もうひとつ別の顔が隠されていた。(※いっさいのネタバレが嫌な方は、以後のページは観賞後にご覧ください)
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