フリーランスは切り捨てられる? 問題山積みの「持続化給付金」で受給格差浮き彫りに
#新型コロナウイルス #持続化給付金
「結局、フリーランスは切り捨てられる」
30代のフリーカメラマンは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で所得が激減しているにもかかわらず、政府の援助がまったく受けられない状況について、悔しそうに話した。
政府は2020年度第2次補正予算で、フリーランスへの支援強化に乗り出した。第1次補正予算で実施された「持続化給付金」で、フリーランスを含む個人事業主を支給対象としたものの、実効性が伴っていないとの批判を受けたものだ。
「持続化給付金」の申請では、主な収入を「事業所得」として確定申告しているフリーランスが対象となっていたため、雑所得など他の所得区分で申告を行ったフリーランスは対象外とされた。このため第2次補正予算では、事業所得以外の区分で申告を行っているフリーランスも給付の対象に加えた。
そもそも、新型コロナウイルスに対する補償は、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」として、小学校などの臨時休校で子どもの面倒をみるため、仕事を休まなければならなくなった保護者に対しての補償から始まった。
この制度では、雇用されている労働者に対しては、企業が賃金を支払えば、1日当たり8,330円を上限に助成金が支払われることになった。しかし、フリーランスについては労働時間が決まっていないことや雇用保険の加入条件が週20時間以上の労働であることなどを理由に、半額以下の1日一律4,100円の支給となった。
その後、助成金額が少ないとの批判を浴びた政府は、2020年4月1日以降に取得した休暇などの分について上限額を、雇用されている労働者は1万5,000円、フリーランスについては7,500円に引き上げたが、結局、雇用されている労働者とフリーランスの格差は縮まらなかった。
また、事業者向けには「小規模事業者持続化補助金」が制度化されているが、補助金の申請には会社の設立もしくは開業届の提出が必要なため、フリーランスの申請は原則認められない。
結局、「小学校休業等対応助成金」では雇用されている労働者とフリーランスに格差があり、「小規模事業者持続化補助金」はフリーランスが申請することができない。そうなると、フリーランスが頼らざるを得ないのが冒頭の「持続化給付金」ということになる。
そこで第2次補正予算では、事業所得以外の区分で申告を行っているフリーランスも給付の対象に加え、フリーランスの適用範囲を拡大したわけだ。この点について、「これでフリーランスも持続化給付金が利用できる」と評価する経済ジャーナリストや生活ジャーナリストを名乗る人たちが多くいる。
だが、これは大きな間違いだ。前出のフリーカメラマンは、「フリーランスの実態を知らない連中の戯言」と一蹴する。持続化給付金が利用しやすくなったと言っても、申請には仕事の業務委託契約書、支払調書、源泉徴収票などが必要となる。
「多くのフリーランスは会社を設立してもいないし、事務所を構えてもいない。それどころか、業務委託契約書などを交わしていないケースの方が多い。いまさら、業務委託契約書を交わして欲しいとか、支払調書と再度発行して欲しいとはとても言えない。フリーランスも競争は激しい。仕事をもらえるだけで幸運だ。フリーランスは非常に弱い立場だということを理解していない」と説明する。
事実、フリーランスの立場は法的にも非常に微妙だ。労働基準法ではフリーランスは「労働者」ではなく、個人事業主と同様に「事業者」と定義されている。それは、労働基準法の適用対象外ということになる。「労働者」は労働基準法第9条で、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されている。
しかし、実際には多くのフリーランスは、個人事業主でもなければ、「使用者」でもなく、また、労働基準法上の「労働者」でもないという、非常に“曖昧模糊”とした立場にある。
安倍晋三首相が「働き方改革」を打ち出し、新しい働き方の一つの方法としてフリーランスという方法を提唱した。しかしながら、新型コロナウイルスの脅威の前では、そのフリーランスという働き方は、あまりにも脆く、不安定なものであることが露見してしまった。
政府はフリーランスという働き方を推奨する以上、その法的立ち場などを明確にし、そして「雇用されている労働者」と同様に、“労働者”としての権利や雇用が守られるようにするべきだ。
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