PTSDに悩む帰還兵が選んだ最後の戦場とは? 米国の暗黒史『ランボー ラスト・ブラッド』
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シルベスター・スタローンの出世作『ロッキー』(76)と並ぶ、もうひとつの代表作に『ランボー』(82)がある。『ロッキー』と同じように『ランボー』もシリーズ化され、スタローンはアクションスターとしての人気を不動のものにした。前作『ランボー 最後の戦場』(08)から12年、シリーズ最終作を謳った『ランボー ラスト・ブラッド』が日本でも6月26日(金)から劇場公開される。
シリーズ最終作を紹介する前に、38年前に公開された第1作『ランボー』を振り返りたい。スタローン演じる主人公ジョン・ランボーは、ベトナム戦争からの帰還兵だ。戦場では輝かしい戦歴を残したものの、米国に戻れば反戦ムード一色、お国のために戦った帰還兵たちは鼻つまみ者扱いされ、警備員の仕事に就くことさえできなかった。
旧交を温めようとランボーが戦友の実家を訪ねたところ、戦友は枯葉剤の影響で病死。虚無感に陥ったランボーがさまよい歩いていると、流れ者を嫌う町の保安官(ブライアン・デヒネー)から執拗な嫌がらせを受けるはめに。戦場でのつらい記憶がフラッシュバックしたランボーは山へと立て篭り、たった1人での戦争を始める。
“遅れてきたアメリカンニューシネマ”『ランボー』の原題は「First Blood」。最初に血を流したのはどちらか? 先制攻撃を仕掛けたのはどちらかを問う言葉だ。不審者扱いされたランボーが抵抗したことから、メンツを潰された保安官は過剰反応してしまう。特殊部隊出身のランボーがそれに応戦し、小さな町全体が戦場となる。
米軍は日本軍に真珠湾攻撃を受けたことの報復として、太平洋戦争が勃発した。沖縄に鉄の雨が降り、広島と長崎に原爆が投下されるまで、この戦いは続いた。朝鮮戦争も、そしてベトナム戦争も同じ理屈だった。相手が先に仕掛けたから報復した、というのが米軍側の言い分だった。
ベトナム戦争からの帰還兵ランボー は、自分の居場所を見つけられない上に、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しんでいる。アクション映画のフォーマットを借りた『ランボー』は、米国の暗い歴史を描いた社会派ドラマだった。無名の男が成功をつかむアメリカン・ドリームの物語『ロッキー』と対になる、影の作品だといえるだろう。
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