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日刊サイゾー トップ > その他  > 渡辺麻友が疲弊した芸能界の闇
【wezzy】

渡辺麻友の引退から連想せずにいられないNGT48暴行事件「真面目が生きづらい」

 6月1日に突然芸能界からの引退を発表した元AKB48のまゆゆこと渡辺麻友(26)。「健康上の理由で活動を続けていくのが難しい」と、本人が所属事務所に申し入れたという。所属する芸能事務所の「プロダクション尾木」が公式サイトで渡辺の引退を発表した後、渡辺もツイッターを更新した。

<私事ではありますが5月31日付けで長年お世話になりましたプロダクション尾木を退所し、芸能のお仕事を離れる運びと致しました>

<これまで関わって下さった皆様、応援してくださった皆様、誠にありがとうございました! 世間ではまだ大変な状況が続きますが、皆様くれぐれもお身体にはお気をつけ下さい>

 電撃引退を受け、「渡辺麻友こそアイドルの中のアイドルだった」と、引退を悲しみ惜しむファンの声がネット上にあふれている。世の中がAKB48の総選挙に大きく注目していた頃、いわゆる全盛期のAKBの中心メンバーだった渡辺。前田敦子、大島優子、篠田麻里子、高橋みなみ、板野友美、小嶋陽菜、と共に“神7”と呼ばれ、大勢のファンの心を掴んでいたことで知られている。渡辺は清楚でひたむき、いわゆる王道のアイドル路線をひた走る存在だった。

 筆者の知り合いに、渡辺のことを「元キャンディーズのすーちゃん(田中好子)に似ているよね」と言い、こっそりと渡辺推しのヲタク活動に励んでいた60代男性がいる。そんなふうに渡辺を推していた中高年は多かったのかもしれない。正統派アイドルとして、渡辺は幅広い年代層に愛される存在だったのではないだろうか。AKBメンバーは有名になればなるほど“アンチ”がついていたようだったが、渡辺はその数も、他の神7メンバーと比べると圧倒的に少なかったように思える。

 だが、彼女にとっては芸能界というのは居心地のいい場所ではなかったのかもしれない。2014年に開催された第6回の総選挙では悲願の1位を獲得。第4回は2位、5回では3位と、1位への道は近そうで遠かった渡辺だったが、2014年7月、1位に選ばれたあと、オリコンニュースのインタビューでこんなことを話していた。

<一昨年の総選挙で『1位になる』と宣言してからの一年間は、『宣言したからがんばらなきゃ!』って考え過ぎて、肩に力が入り過ぎていて。自分自身でも堅苦しくなり過ぎていたところがありました。その結果が3位。真面目にがんばり過ぎちゃって、見ている人からしたら、あまりおもしろみがない人間だなって思われていた気がします>

<だからこの一年は自然体で、今まで見せていなかった一面を出したりと、そういうことを心掛けていました>

 AKB在籍時代、そして引退後も渡辺を語る際に多く使用される表現は「真面目」だろう。2014年のこのインタビューを見る限り、本人にも「自分は真面目である」という自覚は十分にあったようだ。

 その約1年後、6月15日放送のドキュメンタリー番組『情熱大陸』(毎日放送・TBS系)に出演した渡辺は同じく「真面目」というワードを用いて、番組内でこんな発言をしている。「AKB48は、真面目に、ストイックにやることが正解な場所ではない」「真面目な子が損をするような世界でもあるけど、私は絶対報われると信じて、諦めないでやってきた」。「真面目」であるということが、必ずしも美徳として評価されるわけではない芸能界という場所。ひょっとすると渡辺はそういう芸能界ならではの独特の雰囲気やルールに、このときすでに違和感を覚えていたのかもしれない。

 「AKB」「真面目」というキーワードから連想するのは、あの事件だ。2018年12月に元NGT48のメンバー・山口真帆が昨年12月にファンの男性から暴行を受けた事件があった。山口は2019年1月に一人で事件を告発、「恋愛しないで真面目にアイドルやってたことが悪いの?ファンと繋がらなかったことが悪いの?なんでルールを守ってたことがこのグループでは怖いめに遭わないといけないの なんで真面目にやってる子が守られないグループなの 多くのファンを裏切って繋がってる人が正しいの?なんでそれを許すか分からない」などとツイートしていた。

 NGT48の運営会社であるAKS(当時)は2019年3月22日に記者会見を開き、第三者委員会の調査結果について報告。ファンと「繋がった」メンバーがいることは明らかになったが、山口が襲われた事件にメンバーは一切関与していないとのことだった。だが、この会見の途中、山口と仲が良いとされている当時のメンバーのひとりである菅原りこが自身のツイッターでこんなふうにつぶやいたのである。

<ただ真面目にアイドルをしていただけなのに…皆さんの笑顔が見たいだけなのに…悲しい…>

 この一言にも、渡辺がかつて発した言葉と同様に、「真面目」が必ずしも良しとされない芸能界のムード、清濁合わせ飲むことを強要される風習が感じられる。真面目な正直者は損をする。若い彼女たちに、そう思わせてしまうような世界がそこにあったことは確かだろう。

 AKBを卒業し、女優としての道を歩み始めていた渡辺。昨年はNHKの朝ドラ『なつぞら』にも出演しており、その演技は好評であった。だが、同ドラマの出演を最後に事実上の休養状態となっていく。芸能界の水に合わず精神的に参ってしまった……真面目すぎて芸能界に馴染めなかった……彼女の引退発表から、こうした論調の芸能記事が多数出ているが、業界サイドの異常な側面に言及することはまずない。

 ともあれ、人は立ち止まり、振り返り、少しずつ人生を築き上げていくものだ。渡辺麻友は26歳。これからなんにだって挑戦できる年齢だ。いまは心身の不調をゆっくりと治して、元気になってからまだまだ続く人生の次の一歩をどんなものにするか考えてほしい。願わくば、渡辺の真面目さが生かされる新しい道が見つかりますように。

(エリザベス松本)

最終更新:2020/06/03 05:30
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