オードリー・若林「いまの時代にピッタリよ」 芸人と客の新たな“ソーシャルディスタンス”の萌芽
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千鳥・大悟「これなかなか客がおったらできんネタやで」
千鳥・大悟「これなかなか客がおったらできんネタやで」
30日の『クセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)が面白かった。タイトルの通り、「クセがスゴい」ネタを集めた特別番組だ。メインの司会は千鳥の2人。
他の番組と同様、コロナ対応が図られたこの番組。スタジオの出演者の間には距離が保たれ、アクリル板が置かれている。ネタについても、身体的な接触がほぼない形のネタが披露されていた。というか、いつものコンビやトリオではなく、1人でネタをする芸人が何人か見られた。
そんな普段とは異なるコロナ対応下でのネタ収録。番組から芸人へのオーダーも、普段あまりテレビで披露しないネタをしてください、というものだったようだ。
たとえば、四千頭身の後藤が、白紙のフリップでフリップ芸をしていたり。あるいは、ロッチの中岡が、何を言っているかわからないが爆笑をとる関西の大物MCのマネをしていたり。
その他にも、桂文枝の未来を心配して作ったネタ(ハナコ)、自身のツッコミをサンプリングした曲の披露(霜降り明星・粗品)、お尻から声を出す(とにかく明るい安村)、インスタライブをするおじさん(シソンヌ・じろう)、思春期特有の目元のモノマネ(ロバート・秋山)、お気に入りのクッションを紹介するYouTuber(友近)、広瀬香美のモノマネ(ミラクルひかる)などなど。後半の面々は、別にこのご時世だからとか関係なく通常営業かもしれない。
で、深夜帯やネットの番組ならまだしも、19時開始でゴールデンタイムど真ん中に放送されたこの番組。一般には受入れられにくい(ということになっている)ネタが、千鳥の2人が見てツッコむことで成立しているのがスゴい。何でも「クセがスゴい」と言えばいいというものではないかもしれないけれど、何でも「クセがスゴい」と言えば対応できる状況を作っているのはスゴい。「クセがスゴい」という言葉が視聴者の許容範囲を広げ、新しい感情の受け皿を作っているようにも感じる。
ところで、同番組のネタ収録の場にいたのはスタッフだけで、観客はいなかったようだ。いわば『あらびき団』(TBS系)方式だけれど、ゴールデンタイムのネタ番組としては珍しいように感じる。
そんな無観客でのネタを見ながら(具体的には、「お尻から声を出します」と尻を突き出すとにかく明るい安村を見ながら)、大悟は言う。
「これなかなか客がおったらできんネタやで」
あるいは、かまいたちの空き巣のネタ。住人の山内が空き巣の気配を感じてテレビや本棚などのセットをバットで叩き潰していくという、少し猟奇的なネタだったのだけれど、これなどたぶん、お客さんが入っていたら「キャー」という悲鳴があがっていたと思う。そして、その声を「邪魔だな」と思ってしまってたと思う。
若林ではないけれど、「客とのソーシャルディスタンス」という言葉がよぎった。
緊急事態宣言が解かれる中、世間は少しずつ以前の日常に戻ろうとしているように思う。しかし、満員電車に連日乗る日常が戻って本当に良いのか。ハンコの慣習は今までどおりで良いのか。本当に以前と同じ日常に戻ってよいのか。コロナ禍は非日常をもたらしただけでなく、より良い日常に向けてあり得る別の選択肢を改めて浮き彫りにした面がある。
客を入れないネタ番組。これが主流になるとそれはそれで変な気もする。ただ、ひとつの選択肢としてもっとあってもよいのではないかと思ったのだけれど、どうだろう。
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