政府による大学改革の弊害か!? 日本の新型コロナウイルス研究論文数が低迷する理由
#教育 #大学 #新型コロナウイルス #論文
新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大する中で、各国の大学や研究機関が新型コロナウイルスに関する研究論文を発表している。しかし、日本の論文発表数は世界で8位~17位と低迷している。
文部科学省の科学技術・学術政策研究所は4月21日時点のWHO(世界保健機関)公開している論文データとバイオアーカイブなど査読前の論文を一般公開するプレプリントサーバーデータで新型コロナウイルスに関する論文数を調査した。
その結果、第1著者の所属先で見た論文発表の国と地域はWHOデータ(データ収集時点: 4月22日)で8307 件、国・地域の推定が行えた有効データ数は4666件だった。論文数では、1位が中国で1158件、2位が米国で1019件、3位がイタリアで375件、4位が英国で312件、5位がフランスで182件、日本は56件で17位となっている。
また、プレプリントサーバーデータでは論文数1933件、国・地域の推定が行えた有効データ数は1581件。論文本数では、1位が中国で545件、2位が米国で411件、3位が英国で95件、4位がイタリアで48件、5位がドイツで45件、日本は8位の31件だった。
WHOデータでも、プレプリントサーバーデータでも、論文数の1位は中国、2位は米国となっており、この2国が突出している。この構図は、新型コロナウイルスの発生源を巡って、WHOを舞台に対立する米中の姿に重なるものがある。
同研究所では、論文数の上位に英国、フランス、イタリア、ドイツの欧州各国が入っていることから、論文数は新型コロナウイルスの感染患者数の多い国が上位を占めており、「論文数と感染患者数に相関関係がある」との見方をしている。
しかし、果たして本当にそうなのだろうか。例えば、OECD(経済協力開発機構)が15歳を対象に3年に1度実施する国際的な学習到達度調査では、2015年の日本のランキングは数学で5位、読解力で8位、科学で2位だったが、2018年では数学で6位、読解力で15位、科学で5位とすべての科目で順位が下がっている。
また、英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの2020年世界大学ランキングは以下のようになっており、ベスト10はすべて米国と英国の大学で占められており、日本の大学では東京大学が36位、京都大学が65位に甘んじている。
では、学術論文数ではどうか。NSF(全米科学財団)の報告書「世界の科学技術の動向2018」によると、2016年の論文数(「文献データベースScopus」に収録されている学術論文)の世界ランキングは1位中国 、2位米国、3位インド、4位ドイツ、5位イギリスの順で、日本は6位だ。何よりも問題なのが、論文総数が減少傾向にある国は日本だけだという点だ。
こうした傾向を見ると、政府の教育政策、特に大学改革の弊害が現れているのではないだろうか。新型コロナウイルスに対する論文数も、日本の感染患者数が少ないことが理由ではなく、研究力が落ちているという実態があるのではないだろうか。
確かに、日本は新型コロナウイルスに対するPCR検査数でも、欧米など各国と大きな開きがあり、サンプル数など研究材料が少ないという点もあるだろう。だが、これも政府のPCR検査に対する取り組み姿勢の表れでもある。
同研究所は、「日本の論文数は、感染者数当たりの論文発表数で米国などを上回っている」としているが、今や新型コロナウイルスに対する研究は、その治療薬やワクチンの開発に当たって重要な役割を担っている。日本の大学、研究機関が十分な研究ができる環境整備は急務だろう。
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