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『チコちゃんに叱られる!』レビュー

『チコちゃんに叱られる!』千葉雄大がチコちゃんに完勝!

「シャープ」という会社名が言えないNHKのもどかしさ

「なんで電子レンジはチンって鳴るの?」というチコちゃんからの質問に答えるのは、MCの岡村隆史である。

岡村「これは、人間の耳の構造です。あれが例えば“ブー”やったら、都会の雑音に埋もれてしまうんです。特に、このコンクリートジャングル東京なんかは」

チコちゃん「いやいやいや、(チンに)なったきっかけを教えてほしい」

岡村「電子レンジっていうのはタイマーセットになっているでしょ? ドイツのベッケン・タイマーさんが一番最初に作ったタイマーがそういう構造やったのね」

 そんな、ドイツの元サッカー選手のフランツ・ベッケンバウアーみたいな人名を勝手に作らないでも……。

 このテーマでチコちゃんが発表した答えは「藤井寺市にサイクリングに行ったから」だった。詳しく教えてくれるのは、電子レンジの“チン”という音を開発したご本人。元大手家電メーカー社員の藤原康宏さんだ。

「電子レンジのチンの音は自転車のベルの音をまねたんです。料理が仕上がったよということを知らせるためにチンと鳴らしたんです」(藤原さん)

 1971(昭和46)年に発売された初期の電子レンジ「R-651」を鳴らしてみると、”チン”と本当に自転車のベル音がする。どうやって鳴らしているかというと、電子レンジの中に本物のベルそのものが組み込まれているのだ。

 ここから、番組は『プロジェクトX~挑戦者たち~』風の再現VTRを放映。BGMには中島みゆき「地上の星」を流し、ナレーションには田口トモロヲを起用した、題して「チコジェクトX~挑戦者たち~」だ。今回のタイトルは「チンの音色よ鳴り響け ~入社4年目 若手社員の戦い~」である。

 家電ブームが到来する高度成長期の昭和36年、家電メーカーに入社した藤原さんは電子レンジ部門に配属される。同年、ライバル会社が国内初の業務用電子レンジを発売。その翌年、藤原さんの会社も業務用電子レンジを発売した。すると、藤原さんの会社の電話が鳴る。そんな短時間で温まるとは誰も思わないので「出来上がったのに気づかなかった。気付いたら料理が冷めていた」というクレームが入ったのだ。ここからは田口のナレーション。

「そろそろかと思ったときには冷めてしまっていた。一体、どうすればいいのか……。藤原は考えた。“終了の合図をつければいいんじゃないか”。目の付けどころが、鋭かった」

「目の付けどころが、鋭かった」って、いっそのこと、もうシャープだって言えばいいのに……。公共放送NHKだけに、「目の付けどころがシャープ」と会社名を言えないのがもどかしい。 

 電子レンジが使われていたのはうるさい厨房だ。厨房で温め終了を気づかせるには、どんな合図がいいのか……? そんな中、藤原さんは会社の催しでサイクリングに出かけた。

 すると、途中で道幅が狭くなる。次々とブレーキをかける社員たち。そのとき、「危ない」と思った藤原さんは“チーン”とベルを鳴らした。すると、人々が一斉に振り向く。誰もが気になる音だったのだ。

「このチンだ! 考えあぐねてたさなかですが、こういうことでこの音に巡り合えるとはちょっと思わなかった」(藤原さん)

 会社の隣町の自転車店からベルを取り寄せ、鳴らし、「このチンだ」と電子レンジの音はあっさり決定する。こうして、自転車のベルが電子レンジに搭載されることになった。昭和42年、国内初の”チン”と鳴る電子レンジが誕生! この電子レンジは大ヒットとなり、人々は電子レンジで温めることを「チンする」と呼ぶようになったのだ。

「やったなという感じです。コンビニ行っても“チンしますか?”って聞いてきますもんね(笑)。そこまでレンジの音を皆さんが言ってくれるとは思いませんでした」(藤原さん)

 よく考えると、「チンする」という言葉で電子レンジを連想させるのはすごいことである。決して誇張ではなく、シャープが新しい日本語を作った。現代で例えると、ネット通販を「ポチる」と表現するのと同じことだろうか? 文句なしに目の付けどころがシャープである。今回の電子レンジ開発エピソードは、本家『プロジェクトX』でも全然いけたはずだ。というか、「都会の雑音に埋もれないように」という岡村の答えは、実は合っていたな……。

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