「仮設の映画館」で上映が始まった『精神0』山本医師の言葉「ゼロに身を置く」が心に刺さる
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「仮設の映画館」というゼロからの試み
新型コロナウイルスの影響で全国の映画館は営業の自粛を求められ、厳しい状況にある。とりわけ経営基盤の小さなミニシアターは死活問題だ。そこで配給会社「東風」は「仮設の映画館」をネット上に立ち上げ、『精神0』の配信に踏み切った。「仮設の映画館」のサイトを開いたユーザーは、『精神0』を劇場公開する予定の各地の映画館からお気に入りの劇場を選んで視聴することができる。「仮設の映画館」の収益金は、配給会社とユーザーが選んだ劇場側と折半する形となっている。「仮設の映画館」の内情を、「東風」のスタッフに尋ねた。
「ニューヨークで暮らしている想田監督が3月末に来日し、『精神0』の5月2日公開を延期すべきかどうか相談しました。その一方、地方の映画館からは、いくつかの新作の公開が延期になりプログラムに穴が空いて困っているという声も届いていたんです。そうしているうちに都内で出された緊急事態宣言が全国に及び、ほとんどの映画館の営業ができなくなってしまった。そこで『仮設の映画館』の構想を発表したのが、4月8日です。収益を通常の興行と同様に劇場と折半することは、最初から決めていました。幸いなことに、多くの劇場がすぐに賛同してくれました。東風は社員6人だけの小さな会社ですが、若手社員が中心になって、どんなインターフェイスを作るのかアイデアを出し合い、各映画館の客席の画像も載せるなど工夫を凝らしました。またオリジナルのマナーCMも流し、実際の映画館で鑑賞している気分が味わえるようにしています。」(東風・渡辺祐一さん)
5月2日からスタートした「仮設の映画館」での『精神0』の初週7日間の視聴者数は、全国で2,000人以上。緊急事態宣言下という特異な状況で手探りで始めた企画であり、従来の数字と比較することはあまり意味がないのではと渡辺さんは語る。
「この状況下で、ミニシアター系のドキュメンタリー作品としては手応えを感じられる数字だと思っていますし、ある劇場からは『配給側と劇場側との絆を感じることができた』といううれしい声もいただきました。『仮設の映画館』を始めたことで、僕ら自身が希望を持つことができ、励まされているんです」(渡辺さん)
存続が危ぶまれる各地の映画館を救済するため、政府への要望書を提出するための署名活動を行う「SAVE the CINEMA」や3億円以上をクラウドファンディングで集めた「ミニシアター・エイド基金」などのプロジェクトを俳優や映画監督たちが進めているが、「仮設の映画館」は「東風」配給の『精神0』以外にも他社の配給作品も配信している。自分の観たい新作映画を自宅で楽しむことで、小さな配給会社や各地の映画館を直接的に応援することができる。
そして「仮設の映画館」で『精神0』を視聴したユーザーに続けて観てほしいのが、YouTube上で配信されている想田監督と公私にわたるパートナーである柏木規与子プロデューサーのオンライン初日舞台あいさつだ。2人はチャットで送られてくるユーザーからの感想や質問に応える形で1時間にわたってトークしている。ユーザーから多彩な視点の質問が投げかけられ、2人がユーモアを交えて当意即妙に答えることで、映画に対する理解や親しみが深まるものとなっている。早期に終わることを前提とした「仮設の映画館」だが、掛け替えのない映画との出会いを果たす人もいるのではないだろうか。ゼロに身を置くことで、見えてくるものがある。
『精神0』
監督・製作・撮影・編集/想田和弘 製作/柏木規与子
配給/東風 5月2日より「仮設の映画館」にて、全国一斉配信中。以降、渋谷シアター・イメージフォーラムほか順次公開予定
c)2020 Laboratory X,Inc.
https://www.seishin0.com
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