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コロナ禍で進むオンライン診療を手放しで歓迎できないワケ…利用拡大でさっそく問題点が多数浮上

イメージ画像/出典:acworks

 新型コロナウイルスの影響が続く中、政府はオンライン診療を推し進めている。だが、オンライン診療にはさまざまな問題がある。

 新型コロナウイルスの感染拡大により病院機能が低下し、感染拡大防止のために外来診療を中止したり、新型コロナウイルス以外の疾病の治療に支障をきたしたりするケースが発生している。

 こうした事態を緩和するため政府は、オンライン診療を緩和、従来は認めていなかった初診患者についても期間限定で認めた。厚生労働省のホームページには、オンラインや電話で診療を受けられる医療機関のリストが掲載されており、全国で1万を超える医療機関が掲載されている。加えて、オンライン診療の推進と同時に処方箋のオンライン化も進められ、自宅近所の調剤薬局で処方薬が受け取れるようにもなっている。

 厚労省が2018年3月に発出した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、「オンライン診療」とはパソコンやスマートフォンなどの情報通信機器を通して医師が患者の診療や診断を行い、診断結果の伝達や薬剤の処方をリアルタイムで行う医療行為とされている。

 この時点ではオンライン診療を受けるためには、「最低6カ月間、対面で毎月診療を受けていることや3カ月に一度、対面による診療を受ける」が条件となっていた。これは、例えば慢性疾患患者への継続診療や、僻地・離島など対面診療が困難な場合を想定していたためだ。それを新型コロナウイルスでその対象を拡大した。

 確かにオンライン診療には多くのメリットがある。オンライン診療は基本的に予約制となっているため、患者にとっては通院時間や診察までの待ち時間が短縮される。高齢者や体の不自由な人にとっては、大変な外出からも解放される。もちろん、天候や交通の便に影響されることもない。

 同時に医療機関でも待合室の混雑が緩和され、オンライン診療を上手く利用すれば、診察時間を十分に確保することもできる。外出困難者に対する訪問診療が緩和され、時間の節約につながる。また、継続的に患者の診察を続けることで、長期間にわたって患者の状態を把握することができる。

 だがそれら恩恵の一方で、問題やデメリットも指摘されている。まず、患者にとっては最低限、パソコンなどの情報機器を用意し適切に操作することが求められる。従って、高齢者の場合には対応できないケースも発生する。また、オンライン診療の結果、検査や治療が必要となれば、結局、通院する必要があり、2度手間となる。

 医療機関にとっても、対面診療に比べて診断が難しくなり、誤診や病状を見落とす可能性が高まるという点も指摘されている。

 この点について、都内で内科を開業する医師は、「オンライン診療は非常に危険を伴う。パソコンの機能によっては、患者の細かな変化の診断が難しい。特に、触診ができないことは致命的。とにかく、初診でのオンライン診療は避けた方がよい」と警鐘を鳴らす。

 実際にオンライン診療を受けたことがある60代の男性は、「オンライン診療では異常がないと言われ診察を終了したのだが、その後に体調が急変して病院に駆け込んだ」という。もちろん、対面で診療を受けていてもこうしたケースはあり得るが、ディスプレイの画面越しではなく、直接対面して(触診を含め)診察を受けていたら、多少なりともリスクを減らすことができたかもしれない。

 オンライン診療がなかなか浸透しない理由には、こうした直接の対面診察と比較して患者の状況を正確に把握しにくい点もあるが、加えて、「オンライン診療はあくまでも、直接診察の補完的な位置付けとなっている。このため、報酬面での評価が低くなっている」(前出の内科医)点もあげられている。

 オンライン診療の普及には、診察の際に使用する情報機器が医療向けに精度が高まることに加え、診療報酬面での引き上げが行われ、医師が自信を持って的確な診断を下せるようになり、医療行為として報酬面でも十分な評価を得られることが必要だ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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わしおこういち

最終更新:2020/05/15 12:12
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