「もともと東京には火葬場が足りてない」!?医療崩壊の次は火葬場が崩壊の危機に!
#新型コロナウイルス #火葬場
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療体制崩壊の危機などが叫ばれる中、火葬場(斎場)が危機的な状況に陥っていることが明らかになった。
5月7日、千葉県浦安市の内田悦嗣市長は臨時記者会見を行い、新型コロナウイルスに感染して死亡した14人の遺体を市外より受け入れ、浦安市で火葬にしたことを明らかにした。都内では火葬の受け入れに対応できない地域があり、4月17日に都から火葬の協力要請が出て、5月7日までに13人を都から受け入れ、火葬した。遺族からの希望で、2人の遺族が拾骨も行った。
新型コロナウイルスで死亡した遺体については、感染を回避するために火葬場で入念な消毒作業などを行うので受け入れ人数に限界があり、遺族は立ち会うこともままならないのが現状だ。
「極力、棺には触れないようにして、台車に載せて火葬炉に入れます。火葬が終わったあとは台車を中心に徹底的に消毒作業を行うため、新型コロナウイルスのご遺体の火葬には時間がかかります」(斎場職員)
浦安市では今後も1日1人を目安に感染者の遺体を受け入れる方針だが、死者数の増加を想定して受け入れ拡大も検討している。
とはいえこのような、火葬場の受け入れが限界を迎えている問題は、今に始まったものではない。すでに、多くの火葬場で受け入れがギリギリまで増加してきており、それが新型コロナの影響もあって東京都では限界を超えたということだ。
厚生労働省の2018年度衛生行政報告例によると、全国の火葬場は4,086カ所(地方公共団体1,961カ所、公益社団・財団法人15カ所、宗教法人88カ所、その他2,022カ所)となっている。
00年には全国で7,388カ所あったが、これが18年には4,086カ所にまで急激に減少している。その大きな要因の1つが、00年以降に進められた「市区町村合併」がある。市町村合併による自治体の統廃合で行政業務の合理化の的となったのが「火葬場」だった。このため、多くの火葬場が閉鎖された。
驚くべきことに、18年に4,086カ所ある火葬場のうち、過去1年以内に稼働実績のある火葬場は1,405カ所(地方公共団体1,351カ所、公益社団・財団法人3カ所、宗教法人4カ所、その他47カ所)しかない。つまり、4,086カ所の火葬場があっても、実際に使える火葬場は1405カ所しかないのだ。これは人口9万人あたりに1カ所という割合になる。
加えて、「ごみ処理場」や「墓地」などと同様に、火葬場についても“総論賛成・各論反対”という声が強く、火葬場を新設しようとしても、「火葬場を新設するのには賛成だが、近所に造るのは反対」という地域住民の反対が多く、新設は進んでいない。
以下の表を見てほしい。
<人口10万人あたりの火葬場数>(2016年度衛生行政報告例から)
火葬場の多い道県 火葬場の少ない都県
和歌山県 5.08カ所 東京都 0.19カ所
島根県 3.94カ所 神奈川県 0.21カ所
岐阜県 3.69カ所 埼玉県 0.29カ所
北海道 2.91カ所 愛知県 0.40カ所
香川県 2.90カ所 千葉県 0.42カ所
この図を見れば、東京都にいかに火葬場が少ないかは一目瞭然だ。東京都だけではなく、大都市圏では火葬場は新型コロナウイルスとは関係なく、受け入れの限界が目前だったのだ。すでに、日本は多死社会に突入しており、17年には全国で134万397人が死亡しているのだ。
「墓地、埋葬等に関する法律」によると、遺体は死後24時間経過しないと火葬・土葬ができないと規定されている。「火葬は午前中に」あるいは「友引は避けて」などの要望もあり、葬式との兼ね合いもあって、すぐに火葬を望むケースは少ない。これが火葬場が混む一因ともなっている。
しかし、新型コロナウイルスで死亡した遺体については、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」第30条3項で、「感染防止の観点から24時間以内の埋火葬が認められていると共に、病原体に汚染された疑いがある死体は火葬しなければならない」と定められている。つまり、なるべく早く火葬することによって感染拡大を回避するという考えだ。
だが、火葬場の受け入れが難しいとなれば、感染した遺体を何日間も保存しておかなければならない。実際、冒頭の浦安市のケースでは4月中旬に亡くなった遺体を5月まで火葬できずに保存していたことになる。
このまま新型コロナウイルスによる死者が増加すれば、各地の火葬場は一気に限界を超えるだろう。
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