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日刊サイゾー トップ > 社会  > 壮絶DVからの回復、カギは?
「モラハラのトリセツ」第10回

夫は逮捕され、妻はシェルターに避難……同級生夫婦が壮絶DVから回復するまで(後編)

「家族はこうあるべき」というしがらみから解放され……

 一方、Hさんは、グループワークでKさんが受け入れられたことが特によかったのではないか、受け入れられたことで人当たりも柔らかくなった、と語ります。父親の死後、Kさんにパワハラをしていた人も辞めて、一からやり直した会社は、若い社員がKさんについてきてくれている。それはKさんが自分に向き合うことができた結果、人間関係が変わったからだといいます。

 もちろん、DVを受けていた当時はKさんに対して殺してやりたいくらいの怒りを抱えており、その怒りとKさんに対する執着を手放すのがとても大変だったとHさんは振り返ります。

 今となってはその怒りはどうでもよくなり、怒りや執着に巻き込まれず、じっくり冷静に考えた上で、自分自身の決定を尊重したいといいます。

 生まれ育った環境からの影響で構築された価値観はありますが、自分自身の問題について真正面から向き合い、時間をかけて少しずつ解きほぐしていけたのは、Kさん自身の力でもあると僕も思っています。

 そして今、2人は別居を続けていますが、週末は家族で過ごしたり、1週間ほど同居したり、その中で家事育児分担をしたり、2人なりの距離感で、小さなケンカはたまにあれど、ほとんど暴力のない生活を送っています。

 また、別居に対して後ろめたさは感じなくなったといいます。家族にはいろいろな形があることを学び、随分楽になったそうです。「家族とはこうあるべき」というしがらみから解放されたともいえるでしょう。

 何日も一緒にいるとお互いにイライラすることがあるので完全な同居はまだ難しいですが、基本的にはお互いを尊重した対話ができるようになり、今後どのような距離感でどう暮らすのがいいかをすり合わせていきたいということでした。

 このケースは、ある意味「奇跡」のようなものだと思います。誰しも同じようにできるわけではないでしょう。

 問題を終わらせていくには、長い時間と当事者・支援者双方の根気が必要なのは間違いありません。ただ、どのような形であれ、問題は良い方向に解決していく可能性も持っています。Hさんは「お互いに暴力的なコミュニケーションを手放して、対話できる関係になれたことが本当によかった。そんな希望が持てる支援に出会えたことが幸運だった」と語ります。

 また、「いま死ぬほどつらい人も、こういうケースもあるので、どうか希望を持ってほしい」と伝えたいとのことでした。

 僕からは併せて、独りで抱え込まないで信頼できる支援者やカウンセラーに頼ってほしい、そう願っています。

中村カズノリ(なかむら・かずのり)

1980年生まれ。WEB系開発エンジニアの傍ら、メンズカウンセリングを学び、モラハラ加害者としての経験をもとに、支援を行っている。

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Twitter:@nkmr_kznr

なかむらかずのり

最終更新:2020/05/14 16:00
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