空気階段、伝説の「クローゼット」ネタを生んだ “不倫を許せない”水川かたまりのピュアさの正体
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やっぱり不倫は許せない! 絶大なこだわり
――自分がコントをつくるにあたって、参考にしてきたコントってあります?
水川 参考というか、コントのDVDを見ては分類してました。30分類ぐらいあったかな。これは「ストロングスタイル」だとか。
上田 「シュール」とかじゃなくて「ストロングスタイル」? 思ってたのと違う区分だよ! それって誰のコント?
水川 サンドウィッチマンさんとかです。ボケ、ツッコミがはっきりしているじゃないですか。分類するのは富樫義博さんの『HUNTER×HUNTER』(集英社)のマネなんですね。「ホラー」「ラブストーリー」「ブラック」……「シュール」はさらにこまかく分けてた記憶があります。
上田 その分類、知りたいなあ。
水川 昔のスマホに入ってます。えーと、「秘密」「ぶっとび」「世界説明」「不条理」「情報開示」「思わぬ被害者」「事件から豹変」「こんにゃくシステム」……。
上田 「こんにゃくシステム」? 予想以上に細分化してるな……。
水川 今は意識してないけど、潜在的に考えているかもしれないです。それがよくない気もして、酒を飲んでそういうルーティーンを一回忘れて作るようにするときもありますけど。
上田 理屈で考えすぎると柔軟性がなくなるから、直観にも頼るんだね。かたまり君って、コントの書き起こしもしたでしょ?
水川 めっちゃしました。まずはコントの作り方を自分で考えようとして。たぶん、大学受験をしたのもでかいと思うんですよね。あまりムダなことをしたくない。
――そういえば、ふたりとも慶應じゃないですか。
上田 学部学科も一緒なんですよ。法学部政治学科。かたまり君は3カ月で辞めたんだよね? 俺は辞めずに腐ってただけで、状態は一緒。
水川 僕も実家が神奈川だったら、家族のプレッシャーに屈して通っていたかもしれないです。でも一人暮らしだったから、行かなくなりました。
上田 なじめなかったよねえ。“ミスター慶應”みたいなノリでいこうと飛び込んだら、思いきり突き飛ばされた。
水川 お互い、人生の選択肢でその時その時にクソな道をたどっていった結果、芸人にたどりついたんじゃないですかね。
上田 学校を辞めて親はどんなスタンスだったの?
水川 わりと寛容でした。父が26才まで定職についてなくて、母も劇団入っていたりしたので。
上田 そこも一緒だ。俺は小学校のころ、父に「俺が見ていて面白い人生でなかったら殺す!」って言われたから。
水川 すごいお父さんですね……。
――今、当時の慶應生を見返してやろうというモチベーションあります?
水川 今はないです。でも、前まではありました。コントの中で怪獣に慶應大学踏ませたりしてましたから。無意味に。
上田 最初は「絶対見返すから見とけよ!」がガソリンになってたけど、制作効率を考えると、その感情は邪魔になる。
水川 非合理的ですよね。
上田 ストレスだし、ネタにヘンな怒りが入って、笑いにもつながらない。眠くて起きれない朝だけ、怒りは利用しています。「昨晩合コンで盛り上がってた芸人は今寝ている……俺は起きて差をつけるぞ!」って火がつくので。
水川 怒りの感情でコントが狭まるかもしれないですよね。今、負の感情をガソリンにする気持ちはなくて、単純に笑わせたいというマンガの主人公みたいな心持ちになってきました。
上田 (ドラゴンボール)悟空の「俺はもっと強くなりたい」みたいな? いいバナナになってきたね! そういえばかが屋の加賀(翔)くんは子どものころ、『ONE PIECE』(集英社)が好きだったといってたけど、たしかに彼にはルフィがまっすぐ入っている感じがしたんだよね。かたまり君は小学生のころ、何に影響受けたの?
水川 親の方針で、あんまりテレビを見れなかったんですよ。『めちゃ×2イケてるッ!』も『笑う犬』(共にフジテレビ系)も見たことなくて。ずっとサッカーやって、がっつり運動してました。
上田 えっ、そうなの。家で六法全書に蛍光ペン引くタイプかと思ってた。
水川 でも本は読んでたと思います。図鑑を見るのが好きでした。ヨーロッパのサッカー名鑑でプロフィール覚えたり、魚図鑑を覚えたり。
上田 分類や分析が好きだったのかな。
――上田さんはかたまりさんに「こうしてほしい」と思うことはあります?
上田 俺はある時期「こんなことやってていいのか?」ってすっごく落ち込んだことがあったんだよ。喫茶店で「残念ですがあなたの余命は……」という医者コントの設定を考えていたら、横に座ってる受験生がマジメに医学の勉強していて、「自分は一体何してるんだろう?」ってなんかすっごくヘコむことがあったりして。俺と同じで客観視するタイプだとしたら、かたまり君にはそういう感情を無視していってほしい。
水川 あ~。でも、それはないと思います。大学やめて、もう後戻りできないから、「こんなことしてていいのかな」という迷いがないんです。それに僕、人前で怒ったり泣いたりするタイプなんで、そういう客観視はしない気がしますね。
上田 それはよかった。俺は「面白いコント作るぞ!」っていう意気込みを下げる要因がたまに出てくるので、年下と話して「関係ねえな!」と思って自分を焚きつけるようにしていて。
水川 上田さんの火が消えそうになったら、油かけにいきます!
上田 あと最後にひとつ聞かせて。不倫についてどう思う?
水川 えっ? 何ですかそれ。
上田 いや、ゾフィーの「フクちゃん」が不倫会見で、「クローゼット」も浮気の話で、共通してるなと思って。どう?
水川 絶対に許せないです。「不倫報道、バッシングいきすぎだ」みたいな風潮もありますけど、僕、世間の女性ぐらいにちゃんとムカついてますよ。
上田 それでクローゼットに入れて罰与えようという発想が出てくるんだね……やっぱりこんなピュアな人いないよ!
●水川かたまり
1990年、岡山県出身。NSC東京校17期生(2011年入学)。 2012年、相方・鈴木もぐらとお笑いコンビ「空気階段」を結成。『マイナビ Laughter Night』では2016年度、2017年度でグランドチャンピオン2連覇を達成。Laughter Night枠内で「空気階段の踊り場」が放送開始した(2020年から独立して放送)。そのほか、キングオブコント2019 では決勝に進出するなど、頭角をあらわしている。
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