脱北者の全面協力で大ヒットを記録! 韓国ドラマ『愛の不時着』に見る“北朝鮮モノ”作品の軌跡
韓国での生活に困難を抱える脱北者たち
例えば、脱北者でありYouTubeで活躍するキム・クムヒョク氏は、制作チームから依頼を受け、諮問委員として考証に参加した経緯を語っている。キム氏は平壌生まれ。北朝鮮のトップ大学である金日成総合大学で学び、12年に中国に留学した際に脱北した。18年7月、製作チームに初めて助言を求められ以降、対面で全3回、一度に6時間ずつ、北朝鮮のエリートや留学生の実情について情報提供したという。劇中、ロシア留学から帰ってきた主要キャラクターであるソ・ダンの描写もリアルなのだが、背景にはキム氏らのアドバイスが生かされている可能性が高い。
また劇中には北朝鮮の露店(市場)が出てくるが、その店のつくりが「本物そっくりだ」という脱北者たちの感想も多い。おそらく、製作チームはキム氏以外にも複数の脱北者に考証を依頼し、独自に情報収集を続けたのだろう。フィクションであるが、どこかリアル。そんな細部の作り込みが、『愛の不時着』の人気の一要因なのかもしれない。
韓国には現在、約3万2000人の脱北者が暮らしている。その生い立ちや脱北の経緯などは非常に多様だ。ただその理由がどうであれ、韓国に渡った北朝鮮の人々は、日々の暮らしの中でさまざまな困難を抱えている。経済システムや社会体制の違いから生じる適応の難しさ、韓国社会の無理解と差別、なかには「国を捨てたくて捨てたわけではない」(脱北者O氏)と、望郷の念を抱えて生きている脱北者も決して少なくない。
さて、日本人から見たらどこか“閉ざされた国”にも思える北朝鮮だが、『愛の不時着』に散りばめられた“北朝鮮のリアル”観れば、その印象は少し変わるかもしれない。1度観てシンプルに物語を楽しんだ人も、今度は脱北者や北朝鮮の人々の暮らしに焦点を当てて各シーンを振り返ってみるのも面白いかもしれない。
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