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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 流通アナリスト解説マスク生産

一時的に安値も品薄は解消されず!? 流通アナリスト・渡辺広明が解説するマスク生産の裏側

ぼちぼち市場でも見かけるようになってきたが……。

 緊急事態宣言を5月中まで延長する方針が、安倍首相の会見で発表された。もう1カ月の外出自粛が国民に求められる事態となったが、そもそも宣言が解除されてもスイッチを切り替えたように、元の生活に戻るとは考えづらい。以降も新型コロナウイルス感染対策には注目が集まるが、やはり継続的に国民の関心の的となっているのは「マスク不足」だろう。

 いまだドラッグストアやコンビニなどのチェーン店舗、AmazonなどECサイトの両面で不足状況にある。本記事では、あらためて世界的マスク不足に陥った背景、考えられる今後の動向、そして消費者に求められる行動を、流通アナリストの渡辺広明氏に流通的観点で伺った。

◇ ◇ ◇

――現在でもマスクはコロナ・パンデミック以前のように、いつでも買える状況にはありませんが、まずは国内でこのような不足に陥った背景をどう捉えていますか?

渡辺 もともと世界で生産されているマスクのだいたい半分を中国が担っていて、現在は日産約2億枚以上と言われています。日本国内では現在のパンデミックを受けて、月産5~7億枚程度まで引き上げられたと言われていますがまだまだ足りませんよね。例えば仮に、国内の総人口約1億2600万人に月に10枚ずつ配布するとしたら、単純に約12億2600万枚が必要で、50枚入りのマスクの販売が主流となればマスクが足りなくなるのは明白です。

――さらに世界的な需要が爆発的に高まり、3月までは十分に中国からの輸入は受けられていませんでしたね。

渡辺 はい、そのときに何が起きていたかと言うと、中国は国内のマスクを優先するため、輸出をコントロールしていたのです。その後、マスクをする習慣の無かった欧米を中心とする世界の方々がコロナ禍の影響でマスクを着用し始めた事により、世界のマスク不足は加速しました。マスクの原料である「メルトブロー不織布」の価格がコロナ以前の20から40倍前後に高騰して、販売価格も比例して高くなりました。3月末に、スーパーの「イズミヤ」が50枚入りマスクを3980円(税抜)で販売しましたが、コロナ前の50枚入りの価格の6~7倍となり、SNSを中心に「高い」と炎上したため、大手小売業は炎上を恐れ、採用に二の足を踏む形になりました。また、マスクを提案する取引先が新規の所が多く、工場背景などを含むお客に出す品質が担保出来なかったのも理由となります。

 現状は、大手小売に採用されなかったマスクが、市中のタピオカ屋や雑貨屋などで販売されていて価格も下落していますが、中国製に関しては4月18日から品質面の輸出規制が強化され、原材料の高騰も続いています。同品質のマスクの輸入時の原価が上がり、価格も再度アップしていくとの懸念もあります。

――そういったマスク不足の状況を受け、国内企業向けにマスク生産の機材導入補助金制度を3月から開始しました。しかし、販売をオンラインで受け付けても瞬時に完売するなど、まだまだ需要には追いついていない印象です……。

渡辺 シャープやアイリスオーヤマなど、企業が生産に注力することは素晴らしいことです。3月まではマスクの工場を新設や増設をしても、コロナ禍が終息を向かえたら過剰投資になるのではとの観測もあって、今のように世界でマスク不足になると想定出来なかった。そのため、日本の需要を一挙に解決するほどの企業が参入しなかったのです。現在では、日本衛生材料工業連合会の会長、高原豪久ユニ・チャーム社長は、秋口には月産8億枚の生産体制が整うとの考えを示しており、5月中にはソフトバンクグループの孫正義会長が、中国の電気自動車メーカーの比亜迪(BYD)と連携し、月3億枚が国内に流通されるとの事なので、マスクは充足していきます。しかし、それでも私は消費者が使い捨てを基準にしたマスクをする新しい生活様式が一般的になった今、品薄は中期的には解消されにくいと考えています。生活様式と共に消費者の行動も、さらに一歩変わる必要があります。

現状、批判のほうが強い様子の“アベノマスク”(写真/Carl Court / スタッフ「getty images」より)

――政府の対策として、最も注目を浴びたのは布マスクの配布でしたね。渡辺さんから見て、方策についてはどういう印象を持ちましたか?

渡辺 「アベノマスク」は配布直後に異物混入などが報じられていたことが気になります。元バイヤー視点から見ると、検品が徹底されることはもちろんですが、時間が逼迫していたとしても、製造工場に立ち会い出来ないにしても、動画で生産状態を確認するなどが必須で、トレーサビリティの観点からも国民に情報開示を行うべきだったと思います。製造元は中国・ミャンマー・ベトナム・フィリピンと複数国あると報じられていますが、中国でマスク製造している企業はコロナ禍の影響で9000社以上になったと言われているため、管理が難しい商品となっていました。私見ですが、政府側に、受注メーカーの品質管理などを指導する。知見のあるバイヤーを参画させていれば、ああいった事態は起きなかったのではないのかとも想像しています。国民の全世帯に配布され、ほとんどの人が利用する商品である事なら尚更です。

――生活様式に合わせて消費者の行動変化も必要とのことですが、具体的にはどういった変化が必要でしょうか?

渡辺 マスク生産状況が整うことも大事ですが、医療や介護関係者など必要な人に使い捨てマスクが行き渡るよう、一般の消費者は繰り返し使える布マスクを積極的に使うなど、意識変化が必要だと考えます。消費者が「使い捨て」の思考から脱却し、布マスクに転換する時期なのは間違いありません。布マスクも、50回洗っても効果が持続する抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術であるクレンゼマスクのような機能性マスクが発売になるなど、使い捨てマスクと同程度の機能を持ったマスクも発売になります。布マスクを繰り返し使い、消費を抑えていく…そういった消費者の行動が今後は必須です。

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最終更新:2020/05/08 21:00
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