コロナ禍で撮影不能のCM業界、「むしろムダが減った」と歓迎の声も!? テレビの苦境をよそに大進化の予感
#CM #新型コロナウイルス
新型コロナウイルス感染拡大で、テレビ業界は番組収録やロケの中止で大打撃を受けている。CM業界もその影響は免れないが、実は未曾有のピンチがチャンスにもなっているようだ。
あるCM制作会社関係者は、コロナ禍でドタバタの現場の状況をこう語る。
「3月上旬までは、クライアントとなる企業の判断で撮影を続行するものと延期するものがあり、7:3くらいで撮影を強行する案件の方が多い印象でした。ただし、緊急事態宣言の影響で3月中旬以降の仕事は全て延期もしくは中止になっていて、なかには撮影当日に急遽中止になった案件もあったりで、現場は大混乱しています」
撮影がストップしている状況下で、目に見えて急増しているのがACジャパンのCMだ。ACジャパンは自然災害などの不可抗力の事象が発生した際、広告主企業の申請によって差し替えることが可能なもので、テレビCMの効果測定ツール「Madison」を提供するPTPによると、2020年3月1日から4月24日までの全放送エリアにおいて、ACジャパンのCM本数が前年の7倍近くも増加したことが判明している。
また、現在流れている企業のCMにも、実は異変が起こっているという。
「企業はすでにCM枠を買ってしまっているわけですが、新しく流せるものはないので、数年前の素材をそのまま流していたり、この3月に切れるはずだったタレントとの契約をワンクール延長して無理やり放送を続けたりと、苦肉の策に出ています。とはいえ、こうしたやり方が、いつまで持つかは分かりませんが……」(前出のCM制作会社関係者)
しかし、こんな状況下だからこそ話題になったCMもある。大塚製薬「ポカリスウェット」は、中高生がそれぞれ自撮りした画像を編集でつなげ、全員で合唱しているかのように見せるCMを流し、SNSを中心に「新しい」「エモい」と評判を呼んだ。
企画内容や撮影方法の大幅な変更を余儀なくされている状態だが、CM業界全体でも、こうした手法でなんとか制作を続けようという気運が高まっているという。
「4月に入ってからは、リモートで撮影が出来るような企画がちらほら進んでいます。たとえば、タレントや著名人にそれぞれ自宅でPCのカメラに向かって話してもらい、画面収録をして、後から対談形式に編集するものなどで、こうしたリモートCMは今後もどんどん増えていくでしょう。
もともと、CMの撮影現場は、スタッフやクライアント、タレントの付き人など総勢数十人、場合によっては数百人も集まるという完全に“密”な空間なのですが、だいたいその半分くらいは“不要不急”な人たちなんですよ。正直なところ、これまではその無駄なスケジューリングや予算の管理に苦労していたのですが、新型コロナのおかげで必要最小限のスタッフで撮影できることが証明されて現場のスリム化が進んでくれるなら、願ってもない話ですよ」(同)
また、大手CM制作会社のなかには、撮影ストップで暇を持て余したスタッフ向けに、オンラインでの社内「動画編集ソフト講座」や「英会話講座」などを設けて、各自のスキルアップにつなげようとする動きもあるという。
コロナ禍に直面しても、工夫を凝らし、タダでは転びそうにないCM業界。むしろ、ムダの削減で、よりよいCMが世に送り出せるかも知れない。
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