オンライン授業後進国すぎる日本、代ゼミや東進のノウハウは活かせない? コロナ禍で待ったなしの教育改革
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、新学期が始まらないまま4月を終えた学校も多い。すでに休校期間を5月末まで延長すると決定した地域もあり、学習の遅れを心配する保護者の声も聞こえてくる。一部ではオンライン授業に乗り出している学校もあるが、アメリカやフランスに比べると、日本はいまひとつその流れに乗れていないのだ。
しかし、日本では「代々木ゼミナール」や「東進ハイスクール」をはじめとする大手予備校が、何年も前からオンライン授業を取り入れ成功をおさめている。そのノウハウを活かせば日本だってすぐにでもオンライン授業を導入できるように思えるが……。一体なぜ、いまだに世界から遅れをとっているのだろうか。
オンライン授業の障壁は技術的なハードルではなく…
ITジャーナリストの石川温氏は日本の現状をこう語る。
「世界に目を向けても、日本のオンライン授業の整備は遅れてるのかなと思います。やはりこのタイミングで積極的に導入を進めて世界に追いつかなければいけないでしょうね」(石川氏)
だが、予備校のノウハウを活かせば義務教育にもオンライン授業を取り入れられる――という簡単な話ではないのだそうだ。
「確かに予備校のノウハウを活かしたり、昨今話題のオンライン会議やオンライン飲み会に活用されているツールを用いれば、技術的なハードルはそれほど高くないでしょう。AppleやGoogleは、オンライン授業を行うためのサービスを提供していますしね。
ただ、問題はもっと根幹の部分にあるのです。義務教育となると経済的に裕福ではない家庭の子もいるので、全員がタブレットやPCを持てるわけではないですよね。かなり普及しているとは言え、全家庭にWi-Fi環境が整っているわけでもありません。でもそういう家庭の子たちにも、同じように授業を受けられる環境を整えなくてはならない…となると、市や区などの自治体が端末を配ったり貸し出す必要が出てきます。
このような各家庭の経済事情やネット環境のバラつきと、それを補うための費用はどこが負担するのかという問題が、大きな障壁となって導入が遅れているのでしょう」(石川氏)
オンライン授業の導入を進め、自治体がモバイルルーターを貸与する方向で話が進んでいる都道府県もあるものの、それもごく一部。全国的にはまだまだ現実的ではないようだ。
さらに石川氏は、教員たちの偏見も影響していると指摘した。
「ネットを通じての授業では勉強にならないのではと懸念している先生も多いようで、オンライン授業のメリットが正しく理解されていないという背景も、影響しているのでしょう。先行してオンライン授業を導入している学校の学習成果が可視化されはじめれば、その認識も徐々に変わってくるとは思いますが……」(石川氏)
コロナの影響で整備も前倒しに? 日本のオンライン授業の未来
やはり、まず児童・生徒一人ひとりがオンライン授業を受けられる環境を整備することが現状の課題であるようだ。けれど、今回の休校措置の影響により、急ピッチで問題が解決する可能性もあるのだという。
「実は、文科省は昨年12月から『GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想』といって、児童・生徒ひとりにつき一台、学習用の端末が行きわたるようにしようという計画を進めています。本来は数年間かけて進めていく予定だったのですが、今回の新型コロナによる休校措置を受けて、この計画を前倒しで始めようという動きも出ています。
実際、すでにやらざるを得ない状況にまできているので、今後は各家庭での環境を整えてオンライン授業を導入していく方向で事態が動きはじめるでしょう。タブレットPCなどが行き渡りネット環境も整えば、オンライン授業はメリットも多い。本物の授業に近い感覚で学習できるようになると思いますよ」(石川氏)
休校の長期化を懸念し、日本でも9月入学・始業を選択肢に挙げる声も上がっているが、いずれにしても教育現場はバタバタの状態。一刻もはやく子供たちがいつも通りに学習できる日が来ることを願うばかりである。
石川 温(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマホジャーナリスト 「日経TRENDY」に編集記者として従事した後、2003年に携帯ジャーナリストとして独立。 現在は、国内キャリアやメーカーだけではなく、アップルなどの海外メーカーも取材して いる。著書に『未来のIT図解 これからの5Gビジネス』(MdN刊)がある。石川温のスマホ業界新聞公式ホームページより
(文=おかちまちこ[A4studio])
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