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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > ラッパーから学ぶ“儲かった後の生き方”
ライター・しげる推薦

マクドナルドとN.W.A、儲かった人から学ぶ「しぶとく生きれば巻き返せる」という心得【自粛中だから見たい景気がいい映画3本】

マクドナルド成り上がり物語③『ファウンダー』(2017年)

『ファウンダー』Netflix/アマゾンプライム・ビデオ/U-NEXTほか

 ベルフォートもN.W.Aも大儲けしたとはいえ、もっと格が違うのが『ファウンダー』のレイ・クロックである。彼が作り上げたのはマクドナルド。世界で一番有名なファストフード店はどうやって作り上げられたのか、というのを描いた映画である。

 映画が始まった時点で、レイ・クロックは52歳。怪しげな自己啓発にはまり込んでいる、冴えないセールスマンのおっさんだ。売り物は一度に5個のシェイクを作れるミキサー。買い手を探してアメリカ中西部を走り回る彼は、カリフォルニアのドライブインレストランから8台ものミキサーをオーダーされる。

 そんなに大量のミキサーを使わなくちゃいけない店って……と現地を見に行ったクロックは、ディック&マックの兄弟が自分たちの姓から名付けた店「マクドナルド」へとたどり着く。流れ作業でハンバーガーを作りまくるマクドナルドのシステムに感心したクロックは、兄弟にフランチャイズ展開を進言。渋る兄弟を説き伏せ、クロックは中西部の各地にマクドナルドを開店していく。

 フランチャイズを広げる際、クロックがとった手段はけっこうエグい。マクドナルドと契約したオーナーが土地を選んで店を建てローンを組むそれまでの方法から、クロックが購入した不動産をオーナーにリースして、そこに店を建てさせて開業するスタイルに変更したのである。それによってマクドナルドには不動産業のような形でも収入が入ることになり、一気に巨大化するのだ。そして、この急拡大が原因でクロックとマクドナルド兄弟は揉める。

 とはいえ、フランチャイズ展開を始めたころのクロックからは、ギラギラした野心とワクワク感がちゃんと感じられる。ディックが考えクロックが建てた黄金のアーチがかかったハンバーガーショップからは、「これから商売を広げるぞ!」という景気の良さがちゃんと伝わってくるのだ。

 と、今まで挙げた3本だが、紆余曲折あって主人公たちはけっこうしんどい目にも遭う。ベルフォートは逮捕されちゃうし、N.W.Aは内輪揉めの挙句バラバラになっちゃうし、クロックは創業者のマクドナルド兄弟と決別することになる。上映時間の間ずっと景気がいい映画というのはまずあり得ない。映画の中で成り上がった奴は、一回はひどい目に遭わないとならないし、最悪そのまま死ぬ可能性もある。

 とはいえ、実話を基にしたこの3本の映画の当事者たちはなかなかしぶとい。ベルフォートはなんだかんだで最近はモチベーショナル・スピーカー(≒セミナー講師)として講演に忙しいらしいし、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』にもちゃっかりカメオ出演している。イージー・Eは死んじゃったけど、ドレーはヘッドホンで一発当てて今や有名実業家だし、アイス・キューブはラッパーとしても俳優としてもいまだに活躍している。マクドナルドについては、別に説明する必要もないだろう。

 どんなに景気が良くても、ずっとその状態が続くことはなかなかない。しかししぶとく生きていれば、後から始めた商売が案外うまくいったりすることもある。めちゃくちゃ儲かった人を描いた映画は、そういうことを教えてくれる。現在はいろいろ大変で冴えないことも多いけど、乗っているヨットが沈没しかけても生き残ったベルフォートのように、なんとかしぶとく生き延びていればそのうちいいこともあるだろうと、しみじみ思う今日この頃である。

●しげる
1987年、岐阜県生まれ。ライター。プラモデル、アメリカや日本のオモチャ、制作費がたくさんかかっている映画、忍者や殺し屋や元軍人やスパイが出てくる小説、鉄砲を撃つテレビゲームなどを愛好。

最終更新:2020/05/04 11:00
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