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日刊サイゾー トップ  > 『映像研』乃木坂・齋藤飛鳥が好演
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

ドラマ版『映像研には手を出すな!』で齋藤飛鳥が示した、“女優・乃木坂46”の可能性

齋藤飛鳥が際立出せた『映像研』の核

 その一方で、リアリティもある。浅草の抱える生きづらさのようなもの、他人が苦手な引きこもり気質ゆえに絵の世界に没入する姿は、齋藤が演じる浅草のほうに強く感じる。おそらく齋藤の中にある内省的な気質と、絵描きとして「最強の世界」を求める浅草の気質がシンクロしたのだろう。齋藤がいることで「想像の世界で遊ぶ楽しさ」という『映像研』の核の部分が、より際立っている。

 漫画のイメージと違いすぎたため、ミスキャストかと思われたが、齋藤を筆頭とする3人の演技は見事にハマっている。これは3人が乃木坂というアイドル出身であることが大きいだろう。

 乃木坂の代表曲「制服のマネキン」ではないが、こういう漫画やアニメのキャラクターを実写で生身の俳優が演じるには、等身大の人間を演じるのとは別のセンスが要求される。それは文字通り美しいマネキンになりきるような記号になりきる芝居なのだが、それこそまさに齋藤たちがアイドルとして追求してきたこと。同じアイドルでも人間としての生々しさが勝っていた前田敦子たちAKB48出身の女優とは真逆の才能である。

 齋藤たち乃木坂は、(漫画やアニメのエッセンスを持った)キャラクタードラマにおいて、なくてはならない女優となっていくことだろう。

『映像研』の3人の演技は、そんな新しいドラマの地平を見せてくれるものだった。

成馬零一(ライター/ドラマ評論家)

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。ライター、ドラマ評論家。主な著作に『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)などがある。

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Twitter:@nariyamada

なりまれいいち

最終更新:2023/02/27 19:52
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