岡江久美子は唯一無二の“主婦女優”だったーー『はなまる』が生んだバイプレイヤーの異能
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4月23日、新型コロナウイルス感染による肺炎で亡くなった女優の岡江久美子さん。63歳という早すぎる死に、悲しみの声が多くよせられている。
週末のニュースでは岡江さんの死を悼む特集が多く放送されたが、そこで取り上げられたのはやはり情報番組『はなまるマーケット』(TBS)での名司会っぷりだ。18年間という決して短くない年数を、昼の帯番組の司会者として立ち続けた岡江さん。しかし、彼女は名司会者である一方で、“国民的お母さん女優”という稀有な存在でもあった。
1975年、TBSの昼の帯ドラマ『お美津』の主演で芸能界デビューを果たした岡江さん。しかし当時女優としての評価はさほど高くなく、それよりもNHKのクイズ番組『連想ゲーム』での活躍を覚えている人も多いかもしれない。そんな岡江さんが女優として注目を集めるようになったのは、91年から99年までの間長くシリーズ化した昼ドラマ『天までとどけ』(TBS)だろう。放送作家のA氏はこう語る。
「『天までとどけ』はアラサー以上の世代には特に印象に残っている作品じゃないでしょうか。なんでもない大家族もののドラマで普遍的なストーリーなんですけど、学生時代の夏休みに、なにげに毎日見ていたりして。そのうちだんだん大家族に移入していくんですよね(笑)。岡江さんはまっすぐで優しい理想のお母さんだった。あの頃、夏休みに『天までとどけ』を見てた人間が、今のテレビの現場にもいっぱいいると思いますよ。『味いちもんめ』(テレビ朝日)の女将さん役とか、映画『アオハライド』のお母さん役とか、ああいうあったかいイメージの役が多かったのも『天までとどけ』のお母さん役のイメージが強かったからじゃないでしょうか」(放送作家のA氏)
さらに岡江さんの「お母さん」イメージを強化したのが『はなまるマーケット』だった。岡江さんは番組の中で司会としてだけでなく、たびたび「主婦として」「主婦の目線で」と前置きしてコメントを述べることがあった。ここでは司会者や女優としてだけでなく、「主婦代表」として視聴者に寄り添った目線を持ち続けようと努めていた印象が強い。
「旦那さんも俳優、娘さんもタレントという芸能一家でありながら、派手なイメージがまったくなかったのも岡江さんの特徴だと思います。『はなまるマーケット』をきっかけに、優しいだけじゃなくてたまに毒舌な面も見せたりして、近所のお茶目な奥さんみたいな親しみやすさが増した。情報番組の司会なんかをやるとバラエティ的な印象が強くなるので、女優としてのイメージを損なう可能性もあったけど、岡江さんは逆に『はなまるマーケット』のおかげで『主婦』や『母親』というイメージが強化され、映画やドラマの端役としても重宝されたのでしょう」(前出・放送作家A)
『はなまるマーケット』によって押し出されたある種の『女優らしくない』イメージが、逆に岡江さんを名バイプレイヤーたらしめていたのかもしれない。主人公を時に叱咤しながら優しく見守るお母さんーー岡江さんという母をなくした映画・ドラマ界の穴は大きい。
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