劇場公開に先駆け、新作映画をネットで先行配信 アートの力で傷ついた心を癒す『サイコマジック』
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映画界の苦境もホドロフスキー監督が救う!?
ホドロフスキー監督が提唱するサイコマジックに興味を持った人は、DVD化されているもう一本のドキュメンタリー映画『ホドロフスキーの惑星』(94)もチェックしてみてほしい。無料のワークショップを開いていたホドロフスキー監督は、その様子を撮影していたカメラマンを呼び寄せ、即興でその場に集まっていた人たちの中から父親っぽい人、母親っぽい人たちを選ばせ、疑似家族を構成させる。一連の作業の中で、カメラマンは厳格で口数の少なかった父親との間に軋轢があったことが判明する。
このとき、たまたまワークショップに参加していたメビウスは疑似的な父親を演じることになり、カメラマンは本当の父親には言えなかった本音をメビウスに投げ掛ける。その言葉を受けたメビウスは、とっさにカメラマンを抱きしめる。カメラマンを悩ましていた暗い記憶が、演劇的手法によって温かい記憶に上書きされた感動的な瞬間だった。サイコマジックのプロトタイプとなったシーンだろう。
記憶の中のつらい出来事を、ホドロフスキー監督は演劇や映画の力で操作し、ポジティブなものへと変えてしまう。ホドロフスキー監督自身もサイコマジックによって、力を得ているようだ。すでに亡くなった両親とホドロフスキー監督はずっと不仲だったが、『リアリティのダンス』『エンドレス・ポエトリー』の劇中で、亡き両親との和解を果たした。現実では叶えられなかった夢や希望を形にしてみせるのが、演劇や映画であり、芸術が持ち得る可能性なのかもしれない。
全国の劇場への自粛要請が続く中、配給会社アップリンクは『ホドロフスキーのサイコマジック』をネットで先行配信し、その収益は上映が予定されていた全国のミニシアターへ均等に配分するという。また、ホドロフスキー監督の旧作『リアリティのダンス』『エンドレス・ポエトリー』も含め、アップリンクがこれまで配給してきた作品60本を3カ月間見放題になるキャンペーン配信も行っている。ホドロフスキー監督は人間の心だけでなく、ミニシアターの苦境も救うことができるだろか。
『ホドロフスキーのサイコマジック』
監督・脚本/アレハンドロ・ホドロススキー 撮影監督/パスカル・モンタンドン=ホドロフスキー
出演/アレハンドロ・ホドロフスキー、アルチュール・アッシュ
配給/アップリンク 5月22日(金)よりアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開 ※オンライン先行上映は4月24日(金)よりスタート(5月21日まで)
(c)SATORI FILMS FRANCE 2019c)Pascal Montandon-Jodorowsky
https://www.uplink.co.jp/psychomagic/
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