劇場公開に先駆け、新作映画をネットで先行配信 アートの力で傷ついた心を癒す『サイコマジック』
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公開が待たれていたアレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作映画『ホドロフスキーのサイコマジック』(英題『Psychomagic, an art that heals』)が、5月22日(金)の劇場公開に先駆けて、4月24日(金)よりオンライン配信される。もともとは4月24日からの劇場公開を予定していたが、新型コロナウイルスの影響のために公開日を延期。自宅待機を余儀なくされている映画ファンのために、配給会社アップリンクが先行配信することを決めた。興行の見込みが立たない映画界に一石を投じる、新しい試みとしても注目される。
南米チリ出身、現在は91歳になるホドロフスキー監督。彼の名前は、ミニシアターで育った世代には格別なものがある。西部劇と宗教性を融合させた『エル・トポ』(69)、シュールさをさらに極めた『ホーリー・マウンテン』(73)はカルト映画として人気を博し、日本のミニシアターでも特集上映が組まれた。誰も見たことのない新しい世界へといざなってくれる先導師、それがホドロフスキー監督だ。
1970年代のホドロフスキー監督は、フランスの人気コミック作家メビウスに絵コンテを依頼し、デザインに前衛芸術家のギーガーを起用した、SF大作『デューン』に挑戦する。この壮大なスペースオペラは未完に終わったものの、絵コンテ集やイメージ画は『エイリアン』(79)や『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)など多くの映画に受け継がれることになった。このくだりは、ドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』(13)で詳しく語られている。
独裁政権下のチリで育ったホドロフスキー監督は、自身の少年時代を『リアリティのダンス』(13)、青春時代を『エンドレス・ポエトリー』(16)として映画化。24歳でパリへと渡り、マルセル・マルソーらと出会って演劇活動に目覚める三部作の完結編の制作準備も進められているそうだ。今回の『ホドロフスキーのサイコマジック』は、ホドロフスキー監督のこれまでの創作スタイルの秘密を解き明かすセルフドキュメンタリーとなっている。
ホドロフスキー作品には独自の表現方法が用いられ、他のどの監督の作品にも似ていない。ホドロフスキー監督にとって映画制作は、お金もうけの手段ではなく、アートの力で人々の心を癒す心理療法だということが本作を観ると分かる。SF映画『デューン』は未完に終わったが、後進の映画人たちの創作意欲を大いに刺激することができた。そのことにホドロフスキー監督は満足している。ホドロフスキー監督はその人並みはずれた洞察力と想像力、そして演出力と情熱によって、映画人だけでなく、一般の人たちの心の悩みもひとつずつ解決してみせる。
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