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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 百田尚樹の“変節”読み解く

コロナ対応でモタつく“友人”安倍総理をディスる! 著作から読み解く百田尚樹の“変節”

安倍首相との会食後に変わった政府の動向

――つまり、新型コロナウイルス対応をめぐっては、かなり早い段階から安倍政権と認識が異なっていたわけですね。

藤田 そうですね。振り返ってみますと、ある時期まで、日本政府の対応は遅く、かなり後手に回っていました。政府主導だったかはわかりませんが、「風邪と同じ」的なキャンペーンもありましたね。その後、2月26日には安倍総理がイベントに対して「今後2週間は、中止、延期または規模縮小等の対応を要請することといたします」と言ったことを皮切りに、27日には小中高校への休校要請。3月5日には、中国や韓国からの実質的な入国制限を行うことを決定し、4月7日に非常事態宣言を発します。

 これに対し、百田尚樹は、2月28日の安倍首相との会食に同行した、『日本国記』(幻冬舎/18年)の編集者・有本香の恫喝が功を奏したのではないかという趣旨の内容をツイートしています。28日の会食後にこうつぶやいています。

 そして、入国制限が決まった3月5日には、それを振り返ってこう書いています。

――自分たちの影響力を大きく見せたいだけのような気もしますが……。

藤田 安倍と百田は、2013年に月刊誌「WiLL」(ワック)で対談を行って以来の「友人」関係であるといいます。百田自身の記述によると、月に一度は電話で会話をしているらしいです。2月および3月のツイッターでの発言を見ると、百田が首相や政府や内閣調査室らの「手先」として「応援団」をやっているのではなくて、むしろ、政府に意見をする立場でもあるのではないか、とぼくは感じます。確かに、政府の動向は、会食後に変わっています。

――もちろん2人の発言だけで決めたわけではないでしょうが、SNSやデモ、国会で多くの人からいくら批判されても安倍首相がスルーしていることに比べれば、ある種「身内」と見なした人間からの直接の声のほうが届いている可能性は否定できないですね。

藤田 政治家や官僚はエスタブリッシュメントなので、大衆や庶民の生活や感情を理解し損ねることがあると思います。安倍首相(と政府与党)にとっては、それを把握するためのアンテナのひとつが、大ベストセラー作家の百田尚樹なのではないでしょうか。そして持ちつ持たれつの関係になっていたのだと、ぼくは思います。もちろん、百田尚樹の影響力を政府が利用するために、彼に介入もしていたでしょう。
――なるほど。百田いわく、以前から「増税するな」「消費税はなくしろ」と進言していたそうですから、なんでもかんでも賛成派の提灯持ちでなかったことは、本当にそうなのでしょうね。

藤田 百田の発言で驚いたのは、知識人や学者やインフルエンサーたちにお金を払って、政権擁護をさせたりプロパガンダや情報操作をさせたりする手口を、今回バラしてしまったことです。

 『百田尚樹をぜんぶ読む』や江藤淳論の中で、ぼくはそれを緊張感を持って書いたり示唆したりしてきたわけですが、こうも堂々とバラされてしまうと、爽快という気持ちも正直あります(笑)。

――例のアベノマスクの件を見ても、著名な保守論客の中にもかなり苦しいロジックで政権を擁護する手合いがいますものね。その点、百田はもともとベストセラー作家ですから、政権に切られても懐が痛むことはないでしょうから、言いたいことが言えると。

藤田 おそらく、彼にとっては、言いたいことを言うことがとても重要なんですよ。

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