ソダーバーグ監督の旧作がネトフリで人気再燃! 主人公は人間でなく感染経路『コンテイジョン』
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スマホやICカードも感染媒体に
スマートな演出ぶりで知られるソダーバーグ監督は、好き嫌いが分かれる監督だろう。他人との濃厚接触が苦手な人たちを主人公にしたデビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』(1989)や、大企業を相手にした実録訴訟劇『エリン・ブロコビッチ』(00)などは淡々とした演出が効果的だったが、登場キャラクターに感情移入できないまま終わってしまう作品もあった。その点、『コンテイジョン』は人間ではなく、ウイルスが感染していく過程、感染経路をフォーカスしているため、スマートさがうまくハマった。ウイルスの第一感染者であるベスが手にしたスマホ、ICカード、グラス、書類などが媒体となって、感染が広まっていく。もちろん、人間そのものも高濃度の感染媒体となる。人間をクールに描きがちなソダーバーグ監督だが、『コンテイジョン』に関しては制作から9年たった今、その評価を改めざるをえない。
同じくパンデミックを題材にした瀬々敬久監督のオリジナル脚本作『感染列島』(09)は、『コンテイジョン』よりも公開は早かったものの、医者たちのヒロイックな活躍に恋愛要素を絡めたウェットな描き方だったため、ぼんやりとした作品になってしまった。ウイルスを完全に撲滅することはできない、というテーマがうまく伝わらなかったのが残念だ。そんな『感染列島』の中で印象に残ったのは、ウイルスの発生源だとマスコミに疑われ、自死へと追い詰められていく養鶏業者(光石研)の悲劇だった。実在の事件を取り込んで映画にする、瀬々監督らしいエピソードだったように思う。ウイルスよりも、魔女狩りに平気で加担してしまう人間の心理のほうが恐ろしい。
話を『コンテイジョン』に戻そう。デマによって一時的に注目を集めたレンギョウは、黄色い花を咲かせる中国由来の植物だ。漢方では抗菌作用があるとされているので、アランの主張はまったく根拠のないウソというわけではない。また、レンギョウの花言葉を調べてみると、「希望」とある。確かに希望がなくては人間は生きてはいけない。だが、レンギョウにはもうひとつ別に、「言いなりになる」という意味もある。
商品棚が空っぽになったスーパーマーケットの映像を繰り返し映し出すワイドショーを見て、誰もが不安に駆られてしまう。メディアによって簡単に踊らせられてしまう大衆心理を、レンギョウの花言葉は言い当てているように思える。ソダーバーグ監督は、レンギョウの花言葉も知っていたらしい。
●『コンテイジョン』
監督/スティーブン・ソダーバーグ 脚本/スコット・Z・バーンズ
出演/マット・デイモン、ジュード・ロウ、ローレンス・フィッシュバーン、マリオン・コルティヤール、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロー、ブライアン・クランストン、ジェニファー・イーリー、サナ・レイン
※ワーナー・ホーム・ビデオよりDVDリリース中。Netflix、Amazon プライム・ビデオなどでもネット配信中
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