GREEN KIDSが紡ぐ移民の歌 差別、暴力、貧困…日系ブラジル人が集住する団地発のラップ
#ヒップホップ #ラップ #GREEN KIDS
ブラジル人人口の比率がもっとも高い静岡の団地
高速道路を降り市街地を抜けると、車は田園地帯に入った。すでに収穫期は終わっているため、土が剥き出しになった寒々しい光景が続く。やがて、平坦な土地に規則正しく並ぶ長方形の建築物が見えてきた。静岡県磐田市、東新町団地。GREEN KIDS「E.N.T」のビデオに惹かれて東京から3時間かけてやってきたが、本当にここに、あのような濃密なコミュニティが存在するのだろうか。確かに静岡はブラジル人人口の比率がもっとも高い県として知られているが、目の前の光景はどうも“南米”のイメージと結びつかない。しかし、駐車場ではちゃんとGREEN KIDSのメンバーが待ってくれていた。
「オレたちが子どもの頃はもっと賑わっていたんですよ」
静岡県磐田市にある東新町団地。空き部屋も目につき、物寂しさが漂っている。
96年生まれ、日系ペルー人4世のACHAは団地を案内しながら、在りし日の様子を振り返る。実際、今は日曜の昼間にもかかわらず閑散としていて、棟を見上げても空き部屋が目につく。
「昔はガイジンが、ガキも大人もそこらじゅうで騒いでて。まるで、外国にいる気分だった」
98年生まれ、日系ブラジル人4世のFlight-Aが言うと、双子の兄弟であるSwag-Aが「外国に行ったことないけどな」と笑う。その横を歩いているのは、BARCO、Lil-SG、DJ PIG、Crazy-K。後者2人は隣の袋井市出身だが、中学生の頃からこの団地に遊びに来ていた。PIGは初めて訪れたときのことが忘れられないという。
「オマワリがクソ大勢いて、『なんだ?』と思ったら、自販機強盗があったんで犯人を捜してるって。その後、下着泥棒が盗んだ家の旦那に捕まってボコボコにされて、見せしめで動画がYouTubeにアップされる事件があって。それが同日に起こったもんだからヤバいところだなと」
一方、Crazy-Kはメンバーで唯一の日本人だ。
「こんなガイジンしかいないところに、よく入り込めたよな」
Flight-Aが聞くと、彼は答えた。
「最初は怖かったけど、感じたんだよね」
「何を?」
「本当の心」
みなが笑う。
「不良だけど、いい心を持ってるっていうか」
そんな、良くも悪くも活気のあった団地で育った子どもたちが、13年、GREEN KIDSを結成した。そして、彼らは「E.N.T」のビデオで、自分たちの音楽によってホームタウンを再生しようと試みたのだ。それにしても、なぜ、東新町団地はこんなにも寂れてしまったのだろうか。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事