GREEN KIDSが紡ぐ移民の歌 差別、暴力、貧困…日系ブラジル人が集住する団地発のラップ
#ヒップホップ #ラップ #GREEN KIDS
――2018年12月、いわゆる改正入管法が成立したわけだが、今、日本で働く外国人の環境はどうなっているのか――。『ルポ 川崎』(小社刊)が話題の音楽ライター・磯部涼氏が、ブラジルからやってきた労働者が暮らす静岡県磐田市の団地と、そこをレペゼンする若手ラップ・グループGREEN KIDSをドキュメントし、“移民”のリアルをあぶり出す!
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2018年秋、YouTubeに上がった1本のミュージック・ビデオにはこの国のもうひとつの現実が映っていた。
「始まりはこの団地だ/East New Town/オレ様はここで育った/ガキの頃からの仲間が集まった」
Flight-Aの右腕には“東新町”というタトゥーが彫られていた。
同作品はラップ・グループ=GREEN KIDSの初めてのビデオとなる「E.N.T」といって、緊張感のあるビートに乗って以上のように歌い出される。ロケーションは古びた団地。集会所の前でたむろする若いラッパーたちは南米系とおぼしき風貌で、身体にはタトゥーが刻まれている。そこにやはり南米系の人々が集まってきて、サッカーシャツを着た子どもたちはダンスを踊り、背後ではブラジルとペルーの国旗が掲げられる。場はパーティのように盛り上がり、酒瓶とジョイントが回っていく。ラップでは団地での決して平穏ではない生い立ちが振り返られるが、サビではこんなフレーズが力強く合唱される。
「環境なんて関係ないさ/逆に今この街に感謝」
そして、騒ぎを聞きつけたパトカーが何台もやってくる。アメリカのラップのビデオではおなじみの光景だ。しかし、舞台はほかでもない日本である。引用した歌詞も翻訳ではなく、はっきりと日本語で歌われている。ひとつ混ざり込んだ“East New Town”という英単語の意味は、カメラがとらえる、タトゥーの文字を見ればわかる。――“東新町”。それがこの街の名前である。
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