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浦沢直樹「アベノマスク」イラストは“風刺画”なのか? その出来栄えをマンガ編集者がダメ出し!

浦沢直樹「アベノマスク」イラスト、風刺画としての価値はいかに……その出来栄えをマンガ編集者がダメ出し!の画像1
「ZAITEN」2月号

『20世紀少年』や『YAWARA!』などの人気作で知られるマンガ家の浦沢直樹が、ツイッターに投稿したイラストが物議を醸している。政府が4月1日に発表した「国内の全世帯に布マスク2枚を配布する」という方針について、「アベノミクス」をもじった「アベノマスク」という揶揄が飛び交い始めた矢先、浦沢氏は安倍晋三らしき人物が布マスクを着用したどこかマヌケなイラストを「アベノマスク」と記し公開。

 ところが、これに対して「ファンだったのに、悲しい」「茶化している場合か」「マンガ家失格」といったコメントが溢れ、「浦沢氏が炎上している」と伝えるネットニュースも散見された。すると今度は、「あれは風刺画」「マンガ家が政治を風刺するのは悪いことじゃない」といった反論意見がSNS上に目立ち始め、「#漫画家アベノマスク」「#マンガ家アベノマスク」というハッシュタグをつけてイラストの投稿をする人々が現れ始めたのだ。

 はたして浦沢氏のイラストは「政治家を茶化しただけ」なのか? それとも「風刺画」なのか? そこで今回は、マンガ編集者でもあるコラムニスト・更科修一郎氏に「アベノマスク」イラストの出来栄えを評論してもらった。まず更科氏はマンガと風刺画のかかわりについてこう前置きする。

「現代ではマンガと言えばストーリーマンガですが、もともと、マンガには一コマで社会や人物をカリカチュアし、寸鉄人を刺しつつも笑いを誘う『風刺画』という役割があります。日本初の職業マンガ家で近代漫画の祖である北澤楽天も政治風俗風刺の専門家でした。なので、風刺画だからダメだ、反体制だからダメだ、ということはないのです」

 その上で、浦沢氏の「風刺画」について「さほど出来がいいとは思えない」と続ける。

「むしろ、浦沢氏の件のイラストが風刺としてはシンプルすぎて、重層的な笑いの仕掛けがなく、思いつきで描いた“らくがき”でしかなかったことが、近年、『手塚治虫の後継者』を自認している氏の言動や行動と釣り合わず、上から目線で『ただ茶化しているだけ』に見えてしまったのではないでしょうか。

 実際、見た印象としては『どんなジャンルでも描けた手塚と同じく、自分は風刺画も描けるんだぞ』という自己主張が先に立っているというか、プロのマンガ家が世に問う風刺画として考えるとそれほど出来は良くないのですよね。

 たとえば、昔、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)誌上で浦沢氏と人気を争っていた澤井健氏が風刺画専門に転じて素晴らしい仕事をされていますが、片手間の批評精神で描いてもそれに匹敵するものにはならないですよ」

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