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10年で消滅する集落3000以上…うちの地元は大丈夫? 総務省発表の衝撃統計の中身

イメージ画像/出典:haikukuku

「過疎化地域の3198集落がいずれは消滅する」――。総務省が3月27日に発表した「過疎地域における集落の状況に関する現況把握調査」で、衝撃的な予測がされている。

 この調査は、2019年4月1日時点の過疎法(過疎地域自立促進特別措置法)により過疎地域に指定された地域を対象に、4年ぶりに調査が行われたもので、過疎地域の集落数は6万3237集落あり、集落人口は1035万7584人、過疎地域の1集落当たりの平均人口は約164人となっている。

 過疎地集落数が多いのは、東北圏(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟)の平地が5407集落でもっとも多く、次いで九州圏(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)の平地が5299集落、中国圏(鳥取、島根、岡山、広島、山口)の山間地が4579集落となっており、過疎地集落と言えば「山間地」とのイメージが強いが、意外にも平地の過疎地集落の方が多いことがわかる。

 ただ、北海道、北陸圏(富山、石川、福井)、沖縄県では過疎地集落の40%超が平地にある半面、首都圏(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨)、中部圏(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)、近畿圏(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)では過疎地集落の40%超が山間地となっている。また、過疎地域の1集落当たりの平均人口がもっとも少ないのは、四国圏(徳島、香川、愛媛、高知)の山間地で49.1人。

 経年変化を見てみると、前回調査(4年前)の15年調査では6万1860集落だった過疎地域の集落数は349集落(0.6%)減少し、6万1511集落となった。減少の内訳は消滅(無人化)した集落が139集落、再編により減少した集落が327集落だった半面、新たに過疎地集落となった集落が74集落あった。

 過疎地集落の変動がもっとも大きかったのは北海道で3841 から3745と、96集落(2.5%)減少した。ただ、消滅集落数では中国圏の40がもっとも多く、新たに誕生した過疎地集落は東北圏が21でもっとも多かった。

 経年比較が可能な地域における集落人口は前回調査時の1047万1075人から72万5590人(6.9%)減少し、974万5485人となった。もっとも減少率が高かったのは首都圏の34万4759人( 8.8%減)だった。 同様に経年比較が可能な地域における集落の平均人口は前回調査時の169.3人から158.4人へと10.8%減少しており、集落の小規模化が進んでいる。特徴的だったのは、首都圏がもっとも減少幅が大きく、16.8人減の183.8人となっている。

消滅する集落は四国圏がトップ、次いで九州圏が

 過疎化集落は、高齢化の進んでいる地域でもある。住民の半数以上が65歳以上である集落の割合は32.2%にのぼり、75歳以上である集落の割合も5.8%となっている。住民の半数以上が65歳以上の集落の割合は中国圏と四国圏で40%を超えており、75歳以上の割合は四国圏で10%を超えている。さらに、住民の半数以上が65歳以上の集落の割合は前回調査の22.1%から32.2%に増加しており、高齢化が急激に進んでいることがわかる。

 さて、今後10年以内に消滅(無人化)する可能性があると予測されている集落は454集落もあり、いずれ消滅(無人化)すると予測されている集落は2744集落にものぼり、消滅すると予測されている集落の合計は3198集落にもなる。地域的に見ると10年以内に消滅する集落、いずれ消滅する集落とも、四国圏が162集落と570集落でトップ。次いで、九州圏の69集落と561集落となっている。

 消滅(無人化)の可能性がある集落では、人口・世帯数ともに小規模な集落や高齢化率が高い集落の割合が高い。加えて、生活を営む上でのインフラが不十分なところが多い。例えば、行政窓口や病院に行くために車などで21分以上かかる割合が2割を超えており、鉄道・バス・タクシーといった移動手段がない集落が、北陸圏27集落(27.8%)、東北圏で99集落(22.6%)もある。

 消滅の可能性がある集落の悲惨さは、この程度ではない。例えば、北陸圏では消滅の可能性がある集落97のうち、病院・診療所のある集落はゼロ、ガソリンスタンドのある集落もゼロ、郵便局のある集落もゼロ、ATMがある集落もゼロだ。消滅の可能性がある集落には、行政機関、病院、商店、飲食店、ガソリンスタンド、郵便局、ATM、小学校、幼稚園・保育所といった市民生活を営む上で必要なものがない。

 さて、今回の調査で「今後10年以内に消滅(無人化)する可能性がある」と予測されている集落は454集落だが、実は前回調査時に「10年以内に消滅(無人化)する可能性がある」と予測されていた508集落のうち、今回の調査までの4年間で実際に消滅(無人化)したのは47集落(9.3%)となっている。少なくとも、今回の454集落も4年後にはまだ生き残れる可能性があるということだ。

 こうした集落を存続させていくためには、集落をサポートする人材が必要となっている。そこで、集落支援員や地域おこし協力隊の活動などが注目を集めている。現在、過疎地域の集落では1万2851の集落(20.3%)で集落支援員が、また1万3740の集落(21.7%)で地域おこし協力隊等が活動している。

 少子高齢化の進展とともに過疎化も急速に進展しているが、それでも過疎化集落の存続に努力している人々もいる。こうした人々の想いが届くように、集落が存続していけることを期待したい。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2020/04/02 23:46
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