『水曜日のダウンタウン』が仕掛けた不思議なテレビ体験
#ダウンタウン #浜田雅功 #水曜日のダウンタウン #テレビ日記
松本人志「説立証されるかどうかは、オンエアされるまでわからない」
浜田に何かあったのか――。そんな疑問と不安がよぎる。しかし、番組では何もなかったかのように、説の検証が続く。「下層YouTuber地獄説」に続いてお送りされたのは、「嫁『坊主にしたい』と言い出して夫から許可もらうの困難説」、そして「自分の衣装を間違えて着てしまった師匠がマネージャーに激昂していたら『それ僕のなんですけど…』とは言い出しづらい説」。いずれも芸人を対象としたドッキリ企画だ。
迎えた番組ラスト。最後の説のプレゼンターだったサバンナ・高橋が、おもむろに語りだす。
「本日は、もうひとつ説がございます」
そして、画面に次の文字が映される。
「『この番組は○月○日に収録したものです』のテロップを冒頭に出して浜田をひたすらカットしてOAしたら何かあったと思う説」
冒頭のテロップと、画面から消えた浜田。これもまた、番組中にひそかに検証されていた説のひとつだったのだ。
もしかしたら説かもしれない。そんな想像もしていたけれど、それでも種明かしを聞いて驚いた。と同時に、安堵した。
その上で思った。この説、浜田以外で成り立つだろうか? アウトローの気配から縁遠い人物、たとえば恵俊彰を対象にした仕掛けだったら、「もしかしたら逮捕されたのかも」といった疑念が、疑念にとどまらず確信になっていたかもしれない。種明かしの後も、ネタとしてスムーズに受け止められなかったかもしれない。松本は浜田をずっとアウトローな人物としてネタにしてきたけれど、そんなダウンタウンの長い時間の積み重ねが、今回の説の立証に最も必要な条件だったのだろう。
また、この説が特殊なのは、番組の中で検証結果が示されなかった点だ。今回の仕掛けについて事前にスタッフから聞いていたという松本は、次のように言う。
「説立証されるかどうかは、オンエアされるまでわからない」
数多くの説にひとまず答えを出してきた『水曜日のダウンタウン』は、とうとう番組内で答えを出さない説を放送したのだ。
さて、時間は23時の少し前、この日の『水曜日のダウンタウン』の放送がすべて終わる。同番組の視聴後特有のモヤモヤとした余韻が、しばらく残る。その余韻の中で、この日の説を振り返って気づく。芸人を対象にドッキリを仕掛けていた番組が、同時に視聴者にもドッキリを仕掛けていたことを。”下層YouTuber”を笑って始まった番組が、テロップひとつで右往左往する視聴者の反応を笑って終わったことを。
画面の向こうの他人を安全圏から笑う視線が、いつの間にか反転し、自分たちに向かう。なんだか不思議なテレビ体験だった。
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