「安い女に見られたくない」ラッパーになったゴーゴーダンサー・君島かれんの野望
#ヒップホップ #ラッパー #君島かれん #Queen B
執行猶予付きのラッパーとコンプラ
ーー「#Nakami0」に関しては、聴きようによっては全方位に喧嘩を売っているような曲です。
「『は? ムカつくんだけど!』ってなる子が多い曲を作りたいんです。実際、あの曲でバンバン喧嘩売ってる。普通の言葉だと直接そいつに向けたら本当に喧嘩になるけど、ラップで全体に向けて歌ったら、誰に言ってるかわかんないじゃないですか。でも、たぶん、そいつは自分のことだと気づくはず。それでいいんですよ。喧嘩売りたいだけなんで。そのうち私の気持ちがなんか優しい感じになったら優しい曲も書きたいけど、とにかく今はそういうサヴェージ・モードを貫きたいですね。最近作った曲も、絶対どっかで誰かを小馬鹿にすることを言ってます。てか、言っちゃう」
ーーただ、「#Nakami0」は最初、中身ゼロな誰かをディスっているように聴こえますが、だんだん歌っている側も含めてみんな中身ゼロな雰囲気になってくる。
「ベロベロに酔っ払って朝方になったときの自分は確かに中身ゼロなんで(笑)、そういう意味ではブーメランなところもありますね。けど、みんな絶対に中身ゼロになる瞬間はあるはずだし、あれでいいと思う。とにかく1発目の『#Nakami0』は、安っぽい子たちを完全に小馬鹿にして、“拭えない君島かれん感”を出していこうとしたんです。実際、ウチってあんな感じじゃないですか」
ーー確かに。リリックを書くときは、参考にしているラッパーはいますか?
「いないですね。ダンサーの立場だろうが、ラッパーの立場だろうが、どうせヘイターはいるんですよ。何をしても、すぐ叩いてくるヤツはいる。だから、誰かラッパーを参考にして叩かれるなら、自分の言葉でラップして叩かれたい。自分が納得できることをやって叩かれるのであれば、痛くも痒くもないっすよ」
ーーちなみに、YouTubeにアップされている「#Nakami0」のMVのコメント欄を見ると、批判の声も少なくないですが。
「JAGGLAの彼女だし、JAMさんのビートということで、クール系の曲をやるんじゃないかって期待があったんだと思いますよ。でも、ウチのキャラ的に1発目としてはああいう曲でよかったと思うし、批判的な反応があっても全然問題ない。だって、これで今後のやりようはいろいろあるわけだから。フザけた曲もできるし、ちょっとカッコつけた曲もできるし」
ーー「#Nakami0」のMVについては、ダンスもキャッチーな要素になっていますよね。そういったMVの演出もしたんですか?
「『ダンスがあったら面白いんじゃない?』って監督さんに言われて、TiKTok的なノリで軽い振り付けをしたんです。あと、MVに中身ゼロのあるクソボケの画像をモザイクかけて出したり、渋谷で酔っ払って騒いでる大学生も映したりしたかったけど、XLARGEと#FR2というアパレルのコラボのタイアップだったから、さすがにコンプラ的に厳しくて……。でも、今後はコンプラを気にしないアーティストでいこうと思います。だって、『ルポ 川崎』でも、『ドラッグ・フェミニズム』でも、自分のことをあれだけさらけ出してるじゃないですか。それに、コンプラを守ったところで、ウチはそもそも執行猶予付きの身だし。あの出来事を経ての今だから。パクられる前みたいに、もう一度テレビに出たいわけでもない。言いたいこと言って、それでウケてくれたらいい」
ーーかれんさんは18年2月にコカインを使用したとする麻薬取締法違反容疑で逮捕され、その後に執行猶予3年の有罪判決が下されました。そうした経験がある意味で活かせる表現として、ラップという選択は現実的だと思います。
「しかし、あのときは叩かれましたね。薬物でたった一回パクられただけなのに……って言うとまた騒がれるけど、『このコカイン中毒!』とかディスられたり。コカインのことを歌ってるラッパーなんていっぱいいるし、それを知ってるヒップホップのファンもいるはずなのに、『なんでこんなに叩かれるんだろう』って逆に不思議に思った。だったら、もうヒップホップで貫きたいなと。だって、そのへんのラッパーより生き方は絶対にヒップホップだったし」
ーー女性だから叩かれたところもあったかもしれませんね。そういえば、近年は日本でもかれんさんのほかに女性ラッパーがどんどん登場していますが、意識したりはしますか?
「ウチとしては、イロモノにはならないように気をつけていきたいなと。最近はそっち系か、ラブソング系を歌ってる子が多いじゃないですか。まあ、恋愛系は挟めたら挟もうかなと思うけど、恋愛にばっか寄り添うよりは“ストリート”な感じでやっていきたい。自分の生き方をまんま表現できるんで」
ーー“ストリート”の現実と対面してきたわけですからね。ちなみに、今後もゴーゴーダンサーは続けていくのでしょうか?
「ステージでゴーゴーとして踊ってからラッパーとしてライブしたり、自分でお尻を振れる曲を作ったりするのも面白いかなと思ってるんですけど、まだ探り探りですね。ただ、なるべくゴーゴーだけの活動にはならないようにしたい」
ーーゴーゴーダンサーとはまた違いますが、2010年代にスターとなったアメリカのラッパー、カーディ・Bはかつてストリッパーでした。
「あの感じ、イイですよね。コンプラなんて全然なくて、かなり下品なことラップしてるじゃないですか。でも、日本語でああいうことをやると、下品になりすぎて、ただ汚いヤリマンの歌になっちゃうんです、悲しいことに。ウチは品が欲しいわけじゃないけど、ヤリマンっぽくはなりたくない。むしろ、そいつらをディスりたいし、質のいいビッチを目指したい。やっぱ、日本語でラップして、いかにイケてる感じの女でいられるか、ですね」
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