ウイルスよりも人間のほうが、ずっと恐ろしい!! パンデミック後の世界を描いた『キュアード』
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エレン・ペイジに襲い掛かる恐怖の正体
カナダ生まれの女優エレン・ペイジは出演だけでなく、製作も兼ねている。この女優はオヤジ狩りをテーマにした密室劇『ハードキャンディ』(05)でブレイクした後、16歳の妊婦を熱演した『JUNO/ジュノ』(07)やジェームズ・ガン監督の怪作『スーパー!』(10)で危険な行為に興奮するオタク少女に扮するなど、作品選びに独特のセンスを見せている。本作でも義弟のセナンは感染症による被害者だと頭では理解しているものの、夫の死にセナンが関わっていたことを知ると、怒りの感情が抑えきれなくなってしまう。理性と感情が交錯する複雑な役どころだが、彼女にしてみれば難役ほど演じがいがあるに違いない。
ハリウッドの売れっ子女優だったエレン・ペイジは、2014年に同性愛者であることをカミングアウトしている。同性婚を題材にした実話もの『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』(15)に出演後、2018年に年下の女性ダンサーと結婚した。だが、カミングアウトするまでは、人気女優としてのキャリアを優先するべきか、それとも自分の性的アイデンティティーに正直であるべきかで、ずいぶん悩んだそうだ。
10代のときに出演した『X-MEN:ファイナルディシジョン』(06)の撮影現場では、ブラット・ライナー監督から同性愛者であることを周囲にバラされ、ショックを受けたとも語っている。社会的マイノリティーの生きづらさを知る彼女が、『キュアード』のクライマックスでは斧を手にして迫りくる敵に立ち向かう。まだ幼い息子を守るために。
ゾンビやゾンビウイルスよりも、もっと恐ろしいものがある。自分たちこそが正義であり、健常者であるという強い思い込みだ。多くの場合は、無知さや無理解さからその一方的な思い込みは生まれてくる。どれだけ殺菌、消毒しても、次々と波のように押し寄せてくる。エレン・ペイジは、その恐ろしさをとてもよく知っている。
『CURED キュアード』
監督・脚本/デイヴィッド・フレイン
出演/エレン・ペイジ、サム・キーリー、トム・ヴォーン=ローラー、ポーラ・マルコムソン
配給/キノフィルムズ 3月20日よりヒューマントラスト渋谷ほか全国順次公開中
(c)Tilted Pictures Limited 2017
http://cured-movie.jp
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