ウイルスよりも人間のほうが、ずっと恐ろしい!! パンデミック後の世界を描いた『キュアード』
#映画 #パンドラ映画館
新型コロナウイルス騒ぎが世界中へ広まる中、とてもタイムリーなゾンビ映画『CURED キュアード』が公開されている。ジョージ・A・ロメロ監督の低予算映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)が発火点となり、高速ゾンビが襲い掛かる『28日後…』(02)、サバイバルコメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)、家族愛を描いた感動作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)など、多種多様なゾンビ映画が半世紀にわたって派生してきた。アイルランド・フランス合作による『キュアード』がユニークなのは、パンデミック後の世界を描いているという点だ。ウイルス感染から治癒した人々をめぐって、激しい差別や偏見が巻き起こることになる。
舞台となるのは近未来のアイルランド。感染した人を凶暴化させるメイズウイルスという新種の病原体がヨーロッパ中に蔓延し、アイルランドは壊滅的な状況に陥った。それから数年が経ち、ようやく治療法が発見される。治安維持のために国連軍も派遣され、街は秩序を取り戻した。感染者のうち75%は回復者として社会復帰することに。残り25%は収容施設に隔離されたままだった。感染騒ぎの中、兄ルークを失った若者セナン(サム・キーリー)は、兄嫁のアビー(エレン・ペイジ)が身元引受人となり、久々に実家に戻ることになる。
セナンと共に収容施設で過ごした弁護士のコナー(トム・ヴォーン=ローラー)も回復者として実家へ向かうが、父親はコナーのことを受け入れようとしない。感染時のコナーが、母親を噛み殺してしまったからだった。街では元感染者を社会復帰させることに反対する抗議デモが行なわれている。回復者たちは街の厄介者として、白眼視されながら暮らさなくてはならなかった。
ゾンビが襲ってくる恐怖よりも、元ゾンビだった回復者たちを健常者たちが圧迫する恐ろしさに本作は重点を置いている。ゾンビウイルスそのものよりも、ゾンビウイルスを忌み嫌う人間たちの起こす言動のほうがずっと恐ろしい。施設から解放されたものの、街に居場所のないコナーは元感染者たちの人権を求めて、「回復者同盟」を立ち上げる。さらには自分たちの主張を社会に広めるために、過激なテロ行為で訴えるようになる。ここらへんの展開は、いかにもアイルランドらしい。
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