トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 五輪延期でボランティア問題再燃?

東京五輪、2021年延期が濃厚か? 「ブラックボランティア問題」の背後にある五輪ビジネスの実態とは――

裏で糸を引いているのは電通

――確かに、ネットに比べて、テレビや新聞といったマスメディアでは、あまり大きく問題にはなっていないですよね。「約4万7,000人が応募」という報道に、「ネットの敗北」と限界を感じている人もいました。

本間 冒頭で申し上げた、僕が一番問題視している「五輪で儲かる連中がいるのに、なぜボランティアだけがタダ働きなのか」というシンプルな疑問を報じた大手メディアはないですね。「酷暑の中で働かせて大丈夫か?」というような論調はあります。だけど、組織委や電通が巨額の利益を受け取っているのにボランティアに還元されないという問題の核心は、なかなか提示されない。僕もいくつかテレビの取材は受けましたが、そこには切り込めない作り手の事情を感じました。唯一『NEWS23』(TBS系)では「これは国家的な詐欺だ」という私の踏み込んだ発言を放送しましたが、これも彼ら自身では言えないから、専門家に言わせるという形をとっているわけです。でも、扱っただけいいのかもしれません。あるテレビ局などは、オファーしてきたのにドタキャンしてきましたから。

――本間さんご自身も元博報堂社員であり、広告代理店の仕組みには詳しいと思います。やはりメディアの側には代理店タブーが存在するわけですね?

本間 そうです。電通の名前は大手メディアではまったく出てこないけれど、組織委を動かしているのは電通です。組織委の半分くらいは、電通の社員だといわれています。結局テレビ局なんて、誰が広告を集めてきてくれるかといったら、電通や博報堂に頼らざるを得ず、けんかしたくないわけです。五輪にも、それが如実に現れている。

――最終的に、11万人という目標人数は集まると思いますか?

本間 「集まる」のではなく「集める」でしょうね。事前登録者が約8万5000人を超えたといわれているけど、少なくともその3~4倍の応募がないと、必要人数を確保するのは難しい。応募したけど行けない・行かないという人は、絶対に出ますから。もう少し時間がたって、やはり人が足りないということになれば、スポンサー企業の社員や公務員に動員がかかるでしょう。それから、建設業関連でも、五輪で仕事をもらった企業には動員がかかると思います。

――無理やり11万人にする、と。

本間 最終的には、数字を達成するでしょう。だけど、その中で純粋なボランティアは全然足りていなかったという事実を、きちんと後世に残すべきです。東京五輪ボランティアが形式上「成功した」となってしまうと、あとあと非常にまずいことになる。以降の国家的なイベントや大規模なスポーツイベント全てで、「東京五輪で11万人集まったんだから」というのが合言葉になってしまうからです。組織委は今後のスポーツイベントでも、タダのボランティアを集めたい。電通も、自分たちが関係するイベントをそれで通したい。見事に両者のもくろみが一致してしまっている。今後の日本のボランティアというもののあり方をゆがめないためにも、東京五輪のボランティアは失敗で終わらなければならないんです。

●ほんま・りゅう
1962年生まれ。著述家。89年に博報堂に入社。2006年に退社するまで、一貫して営業を担当。その経験をもとに、広告が政治や社会に与える影響、メディアとの癒着などについて追及。著書に『原発広告』『原発広告と地方紙』(ともに亜紀書房)、『原発プロパガンダ』(岩波新書)、『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波ブックレット)、『広告が憲法を殺す日』(集英社新書、共著)ほか。

斎藤岬(ライター)

1986年、神奈川県生まれ。編集者、ライター。

記事一覧

Twitter:@msken019

サイト:サイト

さいとうみさき

最終更新:2020/03/24 18:00
123
ページ上部へ戻る

配給映画