『ねほりんぱほりん』東日本大震災から9年……「家族が行方不明の人」のリアルな言葉
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「まだ夫を待っている」という気持ちは人に言いづらい
2人目のゲストは、夫が行方不明になったカズコさん(40代)。その日、仕事が休みだった夫と、子どもの誕生日プレゼントの話をしてくつろいでいたとき、地震は発生した。親戚の安否を確認するため家を飛び出した夫は「子どもたちを頼む」という言葉を残し、1人で行ってしまった。それが夫との最後の会話になった。カズコさんは避難所で夫を待ち続ける。翌日、安否を知る人から「旦那さんは津波に巻き込まれたみたいだ」と知らされた。
その後、体育館にいくつもの遺体が運ばれ、カズコさんは顔を確認するよう促された。当たり前だが、夫を探すためには遺体を次から次へ見なければならない。普通の主婦が100回以上も遺体を見続けたのだ。
「“次が夫だったらどうしよう”って、毎回その緊張がものすごくて。で、確認して“あっ、この方は違う”ってなったときにハッと力が抜けて。その繰り返しです」(カズコさん)
遺体が夫じゃなくてホッとする半面、夫の安否がわからずガッカリする感情も同居する。語られる現実が壮絶すぎる。
半年後に安置所は閉鎖された。身元不明の遺体が見つかったときのため夫のDNAを警察に提出し、カズコさんは連絡待ちの状態になった。「もしかしたら夫はまだ生きているのでは」と、カズコさんは信じたがっている。しかし、親戚は、夫が亡くなった前提で話をしてきた。
「親族の方から“どうせだったらお盆までに葬儀をしてあげたいね”って言われて(苦笑)。すごい悩んだんですけど、受け入れるような形になりました。やっぱり、私は嫁の立場なので……」(カズコさん)
「行方不明なだけで、まだ生きているかも」という思いを拠り所にするカズコさん。きっと親戚も悪気なく、気落ちするカズコさんを見かねて勧めたのだと思う。ただ、妻と親族では悲しみ方が違った。
葬儀をする際は、遺影のための写真が必要になる。でも、写真の多くは流されてしまった。唯一残っていたのは、結婚式に撮った写真。葬儀では、結婚式の白い着物が黒く加工された夫の写真が遺影になった。
「自分の幸せな頃、家族がそろってる頃の写真がこういうふうな形で使われるのは、すごくショックで……」(カズコさん)
葬儀業者もよかれと考えて行った作業のはずだ。でも、立場が違えば、その“よかれ”が一致しない。周りは善意のつもりでやっているだけに、余計つらい。
その後も、カズコさんと周囲のズレは埋まらなかった。
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