日本は「令和の恐慌」を回避できるか? 自民党で“消費税減税”議論が活発化の背景
#政治 #消費税
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が世界経済に大きな悪影響を与える中、国内では新型コロナの経済対策として、消費税の一時凍結や消費税率の引き下げについての議論が活発化している。
3月11日、自民党の若手議員の有志による議員連盟「日本の未来を考える勉強会」が「『令和の恐慌』回避のための 30兆円規模の補正予算編成に関する提言」をまとめ、政府に提出した。
同提言では、「30兆円規模の補正予算を編成し、財源には躊躇なく国債を発行して それに充てること。なお、2025 年のプライマリーバランス黒字化目標は当分の間延期すること」に加え、「消費税は当分の間軽減税率を0%とし、全品目軽減税率を適用すること(消費税法の停止でも可)。なお、消費税の減税のタイミングとして6月を目指し、各種調整を速やかに行うこと」などが盛り込まれている。
れいわ新選組が消費税の廃止を主張し、立憲民主党が消費税率5%への引き下げを議論する中、与党・自民党では消費税廃止や税率引き下げの議論はまったくなかったのだから、自民党の中からこうした提言が出てきたことは驚きだ。
確かに、新型コロナの経済対策として、消費税の一時凍結や消費税率の引き下げに言及しているエコノミストや経済評論家が出てきていた。しかし、2019年7月の参議院選挙で自民党は、10月からの消費税率10%への引き上げを“既成事実”と捉え、選挙の争点にすらしなかった。その自民党議員の中から消費税の一時凍結という提言が出てきたということは、それだけ新型コロナの経済に与えるダメージが大きいということだ。
2月17日に内閣府が発表した19年10~12月期のGDP(国内総生産)速報値は実質季節調整値で前期比1.6%減、年率換算で6.3%減となった。同日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相は、「主に個人消費の(2019年10月の)消費税率引き上げに伴う一定程度の反動減に加え、台風や暖冬の影響を受けた」と要因を分析した。
しかし昨年12月までの数値であるこのGDPの減速には、当然ながら新型コロナの影響は含まれていない。問題なのは、新型コロナの感染が世界中に急拡大し、世界経済が大きな悪影響を受けており、今後、一段と悪化することだ。これに対して、十分な経済対策を行う必要がある。その点では、消費税の一時凍結や消費税率の引き下げは有効な手段となりそうだ。
3月10日、政府は「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」の第2弾を発表した。だが、休校中の児童の保護者ではない自営業・フリーランスやアルバイト・パートで生計を立てている人たちは休業補償を受けられず “こぼれ落ちる”こととなった。
その点では、消費税の一時凍結や消費税率の引き下げは、保護者か否かは問わず、雇用の形態に関わりなく、年金受給者なども漏れなく恩恵を受けることができる。そもそも、消費税には所得の少ない人ほど負担が大きくなるという“逆進性”がある。つまり、消費税の一時凍結や消費税率の引き下げは、所得が少ない人にとっても恩恵があるということだ。
新型コロナへの経済対策では、3月9日にトランプ米国大統領が20年末までの給与税の減免に言及した。翌10日の参議院財政金融委員会では、麻生太郎財務相が減税について「景気対策として減税が一案というのは世界の潮流。反対するつもりはない」と答弁している。
では、実際に消費税の引き下げや一時凍結が行われたことはあるのだろうか。イギリスでは、08年9 月のリーマン・ ショック後に同年12月から期限を限定して、日本の消費税にあたる「付加価値税率」が引き下げられた。
イギリスは財務省が省令により付加価値税率を変更することができる仕組みとなっている。ただし、「その時の税率の25%以内での変更」と「期限を1年以内」としている。これにより、当時17.5%だった付加価値税は15%に引き下げられた。また、カナダでも7%だった付加価値税率が、政権交代により06年7月に6%、08年1月に5%に引き下げられた例がある。
両国とも、その後、付加価値税率は引き上げられているが、リーマン・ ショックによる経済危機に付加価値税率の引き下げを経済対策として打ち出したイギリスのように、日本も安倍晋三政権が“英断”を下せば、消費税の引き下げや一時凍結を経済対策の“目玉”として打ち出せるはずだ。
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