オードリー若林を饒舌にさせる『あちこちオードリー』という異色のバラエティ
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オードリー・若林「ホントのことを言わない国に着陸するんだなと思うもん」
バラエティ番組だと、『あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~』(テレビ東京系)が毎回必見だ。放送圏外でも、TVerなどのサイトで見ることができる。
MCはオードリーの2人。春日が料理店の大将、若林がそこの常連客という設定で、店にやってきたゲストとトークする番組だ。ゲストには基本、芸人をはじめとしたバラエティ番組でよく見る顔ぶれが並ぶ。で、そのトーク内容が、ほかの番組では聞けないような話だったりする。“本音トーク”というか、“尖った話”というか。
29日の放送では、ゲストにベッキーとピース・又吉が迎えられた。2人はオードリーとほぼ同期で、一緒にレギュラー番組で仕事をする機会も多い。ベッキーいわく「芸能界の同級生的」な関係だという。
若林の問いかけに答えながらベッキーは語る。4年前の例の出来事以来、テレビではできるだけ素直なコメントを言うようにしている。事前の打ち合わせで、スタッフからコメント内容を指示されることもある。しかし、現場が変な空気になっても正直に言おうと心がけている。不必要なら制作側でカットしてくれればいい、と。
この話に若林も呼応する。先日、番組にHIP HOPユニットのCreepy Nutsがゲストで来てくれたときのこと。ラッパーのR-指定が「HIP HOPである俺たちは、ホントのことしかしゃべってこなかったし、ホントのことしかラップしてこなかったから、テレビに出てホントじゃないことを言うのが難しい」と語った。この日の帰り道、自分は思った。
「俺、ホントじゃないことばっか言ってるなと思って(笑)。寂しかったもん俺、帰り道」
若林はさらに続ける。海外に行き、日本に戻ってくるときのこと。飛行機に乗り雲の上にいるときは、地上が見えない。けれど、雲を抜けると地上が見えてくる。そんなとき、彼はこう思うという。
「ホントのことを言わない国に着陸するんだなと思うもん」
海外旅行では、Aだと思ったことをAだと言う。おいしいものは「おいしい」と、きれいなものは「きれいだ」と、感動したものは「感動した」と言う。けれど、雲が切れ、日本に降り立つと、自分はAをCだと言ったり、AをDだと言う仕事をしなければならない。感動していないときにも「感動した」と言わないといけない。そういう仕事で、自分は飯を食べている。――若林はそう胸の内を吐露するのだ。
こんなふうに、ゲストと若林がお互いの話に刺激されながら、バラエティ番組に臨む自分たちの内面をあけすけに語る自己言及バラエティ。それが『あちこちオードリー』である。周囲にツッコミを入れつつ、自分自身に対しても真っ先にツッコミを入れる若林が、トークの触媒になっているのだろう。語りが止まらなくなる若林とゲストに対し、内面が希薄な男、春日がツッコミ役に回るのもテレビでは珍しい。コンビのバランスの良さも改めて思う。
――と、いろいろ書いてきましたが、一番言いたいのは、トイレットペーパーを買い占めずに面白いテレビ番組を見よう、ということです。
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