【シリーズ】「読解力低下」騒動のウソとホント(5)
「読解力低下」騒動のウソとホント(5)「教科書が読めない子どもはAIに負ける」理論の罠
2020/03/06 21:00
#読解力
新井紀子とPISAの読解力は、まるで異なる
本シリーズでは従来の国語的な意味での“読解力”、知識の活用や探求を重視するPISA型“読解力”(00~15年)、情報活用力も加えた新PISA型“読解力”(18年~)の違いについて解説してきたが、新井のいう“読解力”はさらに別の話である。
ところが、PISA2015で日本の読解力が6位(全72の参加国・地域中では8位)となり、12年調査の1位からランキングが低下し、平均スコアが下がったことを受け、国立教育政策研究所は「読解力の向上に向けた対応策について」を発表。それを見ると、新井が所長を務める国立情報学研究所・教育のための科学研究所と連携して、高校生を対象とするリーディングスキルテスト(RST)を実施する、とある。
PISA型読解力と新井のいう読解力に果たしていかなる相関があるのか? まったく定かではない。新井のいう読解力を上げてもPISAの読解力が上がるとは限らない。その2つが指すものは、まるで異なるからだ。
にもかかわらず、教育政策に関する専門的な知見があるはずの機関でさえ、この2つを混同したかに見える施策を提言している。
いわんや、読解力問題について深く追っていない市井の人たちや政治家などであれば、両者をごっちゃにして対策を打ち出してしまう可能性が非常に高い。
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