「読解力低下」騒動のウソとホント(2)大学入試改革とマスコミ批判の歪んだ構図
#読解力
昨年末あたりから、日本の子どもの読解力が低下していると話題になっている。その原因について「最近の子どもは本を読まないからだ」などとメディアや見識者は騒ぎ立ているが、実はどれも的外れな議論かもしれない――。『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などの著者で、子どもの本をめぐる事情に詳しいライターの飯田一史氏が、5回にわたるシリーズで読解力問題の実態をえぐり出す!
【シリーズ】「読解力低下」騒動のウソとホント(1) 解消されている“子どもの本離れ”
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2019年末、OECD(経済協力開発機構)が義務教育修了段階の15歳を対象に行う国際学力調査PISA(Programme for International Student Assessment)の結果が発表され、日本は“読解力”ランキングで過去最低の11位(OECD加盟国中の順位。全79の参加国・地域の中では15位)となったことが話題となった。
実はこの“読解力”騒動と、文科省が主導する記述式重視の大学入試改革、20年からの学習指導要領でうたわれている「主体的・対話的で深い学び」を重んじる教育改革とはつながっている。
つまり、「PISAの読解力ランキングを上げろ」と叫ぶマスコミや世間の要求と、文科省が主導する大学入試改革はシンクロしている――にもかかわらず、文科省は叩かれ続けている。
文科省の肩を持つつもりは毛頭ないが、いささか奇妙な光景ではある。
PISAと日本の国語教育の“読解力”は異なる
“読解力”と“記述式”とは一体どんな関係があるのか? PISAの提唱する“読解力”とはどんなもので、どんな問題を出しているのかがわかると、このつながりは見えてくる。
PISAの“読解力”とは、単に文章を読んで意味を理解する能力のことを指していない。「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと」と定義されている(2018での定義)。
つまり、PISAのいう“読解力”とは、従来の日本の国語教育でいう“読解力”とは異なり、生活や仕事で活用され、目的に沿った探求活動に役立てられることが前提の知識や技能を指す。
だからPISAのテストでは、小説や評論を読んで文章の意味を読み取る問題を解かせるだけでなく、当初から一覧表、書式、グラフ、図を使ったテキストを用い、物語、解説、論証などの様々な形式の文章をテストに用いている。さらに、PISA2009年調査からは印刷したテキストだけでなく電子テキストも扱わせ、15年以降はデジタルデバイスを用いた回答に切り替わった。
これは、テストを受けた子どもたちが、将来、生活および労働で様々な資料(例えば申込書などの各種書類、広告など)を読んで理解し、自分の意見を書くことを想定しているからだ。
そして、日本の子どもは初回のPISA2000の頃から、論述形式で答える問題が苦手だということが問題視されていた。
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