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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > ミレニアムのリスベットは究極?

今世紀最大のヒットミステリー『ミレニアム』シリーズのリスベットは、究極のツンデレヒロインか

「ミレニアム 6 死すべき女 上」(早川書房)より

 21世紀において、世界で最もヒットしたミステリーのシリーズといえば、スウェーデン発「ミレニアム」シリーズだということは、衆目の一致するところではなかろうか。紆余曲折を経て、先ごろ発行された『ミレニアム6 死すべき女』の帯によると、全世界でシリーズ1億部を突破したとのこと。この作品で、ひとまずシリーズ完結を果たした。

 このシリーズを大ヒット作たらしめた最大の要因は、ヒロインであるリスベット・サランデルの見事なキャラ立ちによるものだということも、読んだ人誰もが同意するだろう。鼻&眉にピアスのパンクファッションに、背中にはドラゴンのタトゥー。痩せすぎの身体ながら、格闘になると大男をもぶちのめし、コンピューターを扱えば、世界トップレベルの天才ハッカー。弱い者を虐げる男たちのことは、決して許さない。

 シリーズ第一作の「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」で、もうひとりの主人公、ミカエル・ブルムクヴィストの身辺調査をしたことがきっかけで彼と知り合い、ミカエルが依頼された昔の殺人事件の調査を手伝うことになる。続編の「ミレニアム2 火と戯れる女」「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」では、彼女の壮絶な過去と、国家的陰謀にも関わる彼女の家族の秘密が次第に明かされていく。

 雑誌「ミレニアム」を編集するジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストとリスベットは一回だけ体の関係を持つのだが、その後のシリーズでは、お互いにその存在を強く意識しながら、なかなか顔を合わせない。ミカエルは相当なプレイボーイで、一緒に「ミレニアム」を手がける人妻の編集者であるエリカ・ベルジェと夫公認の男女の関係であるだけでなく、意外な関係者ともすぐに大人の関係になってしまったりするのだが、自分に返事をよこさないリスベットにはいつもやきもきしている。リスベットは天才ハッカーなので、いつでもミカエルのパソコンの中身を見られるのだが、ミカエルに連絡を取るのは、彼のメッセージが彼女の関心を引いたときだけ。それでいて、ミカエルがミステリアスな事件の調査を依頼すると協力するし、ミカエルが命の危険に襲われた時には全力で救出しにやってくる。リスベットこそは、めったにデレない究極のツンデレヒロインであるかもしれない。

 作者のスティーグ・ラーソンは3部作を執筆したのち、それがベストセラーになるのを見ることなく2004年に急逝。新しい作者として白羽の矢が立ったのが、ダヴィド・ラーゲルクランツだった。

 当初の作者のラーソンが「EXPO」という雑誌の編集長だったのと同じく、ラーゲルクランツもジャーナリスト出身。「ミレニアム」~「ミレニアム3」の三部作には、弱者への暴力と人権侵害を糾弾するジャーナリスティックな視点が常に流れていたが、ラーゲルクランツもその路線を踏襲している。「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」から「ミレニアム6 死すべき女」まで、一作ごとに新しいテーマを取り入れ、リスベットとミカエルのキャラクターも、生き生きと蘇らせてみせた。

「ミレニアム6」でも、ホテルの同じ部屋に宿泊する展開までありながら、リスベットとミカエルの煮え切らない関係はそのまま。おまけにミカエルは意外な人物を突然新恋人にしてしまうヤリチンぶりを発揮。一応完結編と銘打たれているが、訳者あとがきによると新しい作者によるシリーズ継続もありそうで、リスベットの勇姿をこれからも読めるチャンスは残されている可能性もアリアリなのである。

最終更新:2020/02/26 14:59
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