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『ねほりんぱほりん』レビュー

『ねほりんぱほりん』がギャンブル依存症の危なさを啓蒙するも、“元依存症患者”が明らかにまだヤバかった件

妻の財布からキャッシュカードをくすねる刑事の夫

 2人目のゲストは、スズさん。彼女のご主人はギャンブル依存症で、さらに刑事だった。毎日夕方6時に仕事を終え、その後、夜11時までみっちりギャンブルに通う日々。内容はパチンコ、パチスロ、競馬、競艇で、8年間のトータルで費やしたお金は約1,500万円だった。我々の血税で何をやっているのか……。

 シンジさんと同じで、この夫も平気でウソをついた。「仙台まで犯人を追いかけてタクシーに乗ったから、3万円いる」「福岡までタクシーで追っかけて、帰りは新幹線に乗って帰ってきたから5万円いる」などと適当なことを言い、スズさんからお金をせしめていたのだ。しかも、「経費だから後で返ってくる」と断言する始末。そして、実際に返ってきている。なんのことはない、スズさんのほかに両親にも同じようにウソをついてお金を調達、「返ってきたよ」と言い張っているだけなのだが。

 しまいには、振り込まれた給料を持ち出し始めた夫。困ったスズさんは夫より先に給料を引き出し、家に隠すことにした。しかし、相手は刑事だ。すぐに嗅ぎつけ、見つけ出す。そのときのことを夫が振り返っている。

「ある晩、妻が風呂からなかなか出てこないのでおかしいと思って、後でのぞいたら鏡がピカピカになっていました。妻は物を隠すとき、ついでに周りを掃除する癖があります。絶対(お金が)あると確信しました」

 刑事のスキルを、ダメなベクトルで発揮する夫。そこで能力を発揮してどうする。確かに仕事はできそうだが、なぜその嗅覚がギャンブルに働かないのか? これだけ能力があるのに、ギャンブルでは負けまくる夫。

 ギャンブル依存症の人は、家族のことが二の次になるらしい。あくまで、自分のギャンブルが最優先。お金がないので、スズさんの家庭は旅行も外食もなしだった。子どものおもちゃや三輪車も買えなかった。刑事は給料が高いはずなのに……。

「一番つらかったのは、子どもの運動会とかも“仕事で呼び出された”って言って帰っちゃうんですよ。家族のほうを全然向いてくれなかったですね……。幸せそうな家族を見ると、本当にもう涙が出てきちゃうんです」(スズさん)

 さらに夫は、スズさんが知らないうちに、スズさんのキャッシュカードで30万円をキャッシングしていた。妻の財布からキャッシュカードをこっそり抜き取る刑事。家族や法律より、ギャンブルへの依存が勝ってしまっている。

「腹が立ちすぎて、包丁を持ってきて“死んでくれる?”って。私も頭がおかしくなってるんで。夫は逃げ回るんですけど、“死ねー!”って感じですよ。本当に殺す気はなくて、とにかく本気で脅したらお金を持ち出すのをやめるはずだって」(スズさん)

 この時点で、スズさんは夫がギャンブル依存症だとまだ気づいていない。気づいたのは、夫の両親にスズさんが泣きついたときだった。銀行の通帳を見た義父が「この下ろし方、ギャンブルちゃう?」と発言したのだ。確かに、同じ日付で複数回お金を細かく下ろしているのは怪しい。お義父さん、よく気づいた! さえている。

「いや、お義父さんもギャンブルやってたんで」(スズさん)

 なんのことはない、二代続けてギャンブラーだったのだ。夫のギャンブル癖は、ただの親父譲り。「旦那はギャンブル依存症、しかも刑事」「お義父さんもギャンブラー」と、今回はパワーワード連発である。

 後日、義理の両親を呼んだ状況で問い詰めると、ついに夫は「俺、ギャンブルで全部使った」と白状した。そして、夫はギャンブル依存症の自助グループに通い始めた。ところが1年後、スズさんのカードで夫が携帯ゲームに60万円課金していたことが発覚する。

思うにこの夫、「金を稼ぎたい!」という欲より、「当たりを出したい!」という快感にとらわれるタイプに見える。お金を手にするより、777がそろった瞬間に脳汁が出るのだろう。だから、携帯ゲームにハマる素質もあるのだ。

 スズさんは離婚or回復プログラムの2択を夫に突きつけ、後者を選んだ夫は、みるみる回復していった。ただ、本人の依存症は治っても、家族に傷痕が残っている。

「私自身が、苦しくて苦しくて仕方なくなるんですよね。お金を使われたっていう恨みが消えなくて」(スズさん)

 そして、スズさんも家族の自助グループに通い始めた。同じ体験を話し、聞くことで、癒やされていったのだ。

 今回、2組目であるスズさんと夫の家族に対しては、「よく立ち直った!」と素直に拍手を送りたい。でも、1人目のシンジさんは、まだ明らかにヤバい。ギャンブルのことを話しているだけで普通の状態じゃなくなっているし。ギャンブルは怖いし、依存症は怖い。

 ちなみに、2月10日放送『ストーリーズ 事件の涙』は田代まさし父子特集で、11日放送『病院ラジオ』は依存症治療病院編だった。そして、『ねほりんぱほりん』である。この週のNHKは濃かった。畳み掛けた。考えさせられる3日間だった

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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てらにしじゃじゅーか

最終更新:2020/02/19 14:00
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