正義を振りかざして集団バッシング…日本社会を縛る“世間様”の圧力
#小市民 #エッジ・オブ・小市民 #集団バッシング
ムラ社会的な呪縛がうずまく日本社会
社会心理学者の故・山岸俊男氏は日本の社会構造の特徴について、相互監視、相互制裁のネットワークによって形成された“閉鎖的な集団主義社会”であると指摘した。江戸時代の山奥の農村では、田植えや稲刈りのような共同作業をサボったヤツは村八分にされただろう。それが怖いから、みんなムラの秩序を大切にするし、それを乱すものを排除することで集団は自然と“同質”なものになっていく。そんなムラ社会的な呪縛が日本社会に渦巻いている。世間様の正義の皮をかぶった過剰な個人攻撃は、同質社会からはみ出したものに対する制裁だ。
世間様は“差異”を嫌う。同質集団から逸脱したものに制裁を加えるだけでなく、突出した才能もつぶそうとする。映画『スキャンダル』で2度目のオスカー、メイク・ヘアスタイリング賞を受賞したメイクアップアーティストのカズ・ヒロ氏は、日本国籍を捨ててアメリカに帰化している。彼はインタビュー記事『カズ・ヒロ氏、またもやオスカー候補入り。国籍と名前を変えた心境を聞く』で、日本社会について次のように述べている。
「日本の教育と社会が、古い考えをなくならせないようになっているんですよね。それに、日本人は集団意識が強いじゃないですか。その中で当てはまるように生きていっているので、古い考えにコントロールされていて、それを取り外せないんですよ」
「日本は、威圧されているじゃないですか。社会でどう受け入れられているか、どう見られているか、全部周りの目なんですよね」
世間様がはびこる日本の文化を嫌って、カズ・ヒロ氏は日本国籍を捨てたのだ。
世間様の呪縛は間違いなく、日本社会を窮屈にしている。しかし、世間様はその窮屈さを受け入れる。窮屈であっても、同質集団に帰属していることで、安心感が得られるからだ。その安心感は「みんながやっていることだから」という思考停止につながり、同質社会は維持されていく。かくして今日も正義を振りかざす世間様の水に落ちた犬叩きは続く。
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