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日刊サイゾー トップ > 社会  > 「正しさ」にとらわれモラハラ夫に? 
「モラハラのトリセツ」第4回

「正しさや常識」にとらわれすぎるのは要注意!? 管理職夫がモラハラ加害者になったワケ

仕事で培ったマネジメント力を、家庭にも生かそうと……

 Eさんは面談に臨むに当たり、モラハラについてかなり調べてこられたようで「モラハラとは、DVのように法律で禁止されているわけではない。論文もいくつか読んだが、そもそも自分のしていることがモラハラに当たるとは思えない」という主張をしてきました。

 そこで僕は「モラハラかモラハラじゃないかということは、重要な問題ではないですよ。まずは、ご夫婦でのコミュニケーションにおいて起きている問題について、解決の方法を一緒に模索してみませんか?」と提案してみました。

「モラハラ」という言葉からいったん離れる提案を受けたEさんは少し安心したのか、「自分としては、ちゃんと家庭を回しているつもりなのに、なぜモラハラなどと言われなければいけないのか。こんなことで家がギスギスしてしまう意味がわからない……」と困惑した様子を見せます。

 ここで僕は「ちゃんと家庭を回している」という言葉から、Eさんが抱える「何か」の端緒を感じ、そこを深堀りしていくアプローチとして、どのように「家庭を回していた」のか聞いてみました。

 Eさんは家事分担のためスマホのタスク管理用アプリ使い、夫婦間で家事のタスクリストとその進捗を共有しているとのことでした。

 そのほかにも、結婚式の準備には、なんと「ガントチャート(プロジェクト全体の作業リストや進捗状況を時系列的にわかりやすく表した棒グラフの一種)」を用いて管理してきたといいます。

 そんな中で作業の進捗が遅れたりすると「家族会議」として、遅れている理由や改善案を出し合う……などといった話し合いを日常的にしているということでした。Eさんが仕事で培ったマネジメント力を、家庭にも生かそうとの思いからです。

 そこまで徹底的に家のことを仕事然としてしまうのには驚きながらも「いやあ、そこまでされるのはすごいですね。それにしても、管理職というのは本当に大変ですね」と、素直な感想を伝えました。

 するとEさんは「間違ったことをして、取り返しのつかないことになってしまうのは、絶対に避けたいですからね。これでもまだ足りないくらいですよ」と話します。

 これを聞いて僕は、今はまだ大きな問題にはなっていないけれど、今の状況が続くのであれば、徐々にエスカレートして大きな問題となってしまうかもしれないと感じてしまいました。

 また、Mさんがこの状況に傷ついているのも確かですが、Eさんの「正しさ」に対する依存が、Mさんにもうつり始めているようにも感じました。

 というのも、先にあった「モラハラ認定」が欲しいというところに、「権威」や「お墨付き」という「正しさ」にすがっている様子が感じられたからです。

 確かにEさんの行為はモラハラであり、今後エスカレートして暴力にまで発展する可能性があると僕は思ったのですが、「モラハラ」という言葉にとらわれたままでは、お互いの関係性は悪くなっていく一方なのでは? と考え、2人のお話を、引き続き慎重に聞かせていただくことにしました。

 また、Eさん自身の「ギスギスしてしまっている」という言葉から、もしかするとモラハラかもしれないという自覚を、ほんの少し持っている節も見られます。

 そんな2人がこの先「正しさ」への依存に気づき、関係性を再構築する道はあるのでしょうか? 次回は、2人がそれぞれ持つ問題にアプローチしていきます。

中村カズノリ(なかむら・かずのり)

1980年生まれ。WEB系開発エンジニアの傍ら、メンズカウンセリングを学び、モラハラ加害者としての経験をもとに、支援を行っている。

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Twitter:@nkmr_kznr

なかむらかずのり

最終更新:2020/02/17 10:02
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