トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > アカデミー賞が門戸を開いた!?

アカデミー賞が世界に門戸を開いた歴史的瞬間!? ポン・ジュノ監督『パラサイト』が主要賞を制覇

アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、国際映画賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』。日本でも興収15億円を越えるヒット作となっている。

 歴史が大きく動いた瞬間だった。韓国の鬼才ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(公開中)が、2月10日(日本時間)に発表されたアカデミー賞にて、作品賞、監督賞、脚本賞、国際映画賞(旧・外国語映画賞)の4部門を受賞した。米国映画人たちの祭典である米国のアカデミー賞が、英語圏以外の製作国の映画に主要映画賞を贈るのは画期的なことだ。

 授賞式前の予想では、サム・メンデス監督の『1914 命をかけた伝令』(2月14日公開)が有力視されていた。「007」シリーズなどのヒット作で知られるメンデス監督が、『カメラを止めるな!』(17年)ばりの長回しで第一世界大戦の戦場を撮り上げた臨場感たっぷりな映像が大きな注目を集めていた。結果、『1917』は撮影賞、録音賞、視覚効果賞の技術部門のみの受賞となった。『パラサイト』で描かれた「格差社会」という現代的なテーマ性が高く評価された形だ。

 アカデミー賞は『グリーンブック』(18年)や『ムーンライト』(16年)が作品賞に選ばれたように、「意識が高い」アカデミー賞会員たちは人種問題やLGBT問題などを扱った社会派作品に票を投じる傾向が強い。だが、今年のアカデミー賞はもっと能動的だった。純然たる韓国映画『パラサイト』が作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたこと自体が異例だったが、アカデミー賞の最高賞である作品賞まで贈るとは……!! 米国の映画館で一定期間上映されるなどの条件はあるが、『パラサイト』が作品賞を受賞したことで、アカデミー賞は世界の映画に門戸を開いたことになる。これまでの米国映画界のお祭りから、世界でいちばん面白い映画を決める祭典へとグレードアップしたと言ってもよいだろう。

『パラサイト 半地下の家族』 監督/ポン・ジュノ 脚本/ポン・ジュノ、ハン・ジヌォン 出演/ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジュン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン 配給/ビターズ・エンド PG13 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー中 (c) 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED http://www.parasite-mv.jp

 国際的な問題となっている「格差社会」を扱っているという点では、ホアキン・フェニックスがアカデミー賞主演男優賞に文句なしで選ばれた『ジョーカー』も同じだが、『ジョーカー』が終始シリアスムードだったのに比べ、『パラサイト』は前半はコメディタッチで進み、後半はサスペンスモードに転調していく予測不能なドラマとしての面白さがあった。明確な悪役がいない物語構造も新鮮に映ったに違いない。

 モンスター映画『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)が作品賞、ホラー映画『ゲット・アウト』(17)が脚本賞を受賞した2018年のアカデミー賞も、オスカーの在り方が変わりつつあることを感じさせたが、製作国、言語、映画のジャンルに関係なく、優れた作品は選考対象にしようというアカデミー賞の意識改革は高く評価される。2016年にスパイク・リー監督らに「ノミネートは白人ばかり」と批判されたことから、アカデミー賞は女性会員や非白人系の会員を増やし、今回のアジア初となる『パラサイト』の主要賞受賞へと繋がった。

12
ページ上部へ戻る

配給映画